矯正治療中に起こりうるトラブルにはどんなものがあるのか?予防や対策についても解説
2022年2月4日
「矯正歯科治療中は痛みが出る」と聞く人は多いのではないでしょうか?「矯正は痛い」といったイメージを持っている人も多いかと思います。また、痛み以外にも、「装置を入れることによって何かお口の中にトラブルが起こるのではないか」と心配に思っているという人もいるのではないでしょうか? 矯正歯科治療に興味はあるけれど、このようなマイナスのイメージを持っている人もいるかもしれません。
矯正歯科治療中には、治療のステップに合わせて、口腔内にさまざまな装置を装着します。また、矯正歯科治療は治療期間が比較的長期間にわたるため、治療中にはさまざまなトラブルが起こる可能性があります。トラブルによっては、早めに対応しなければ、治療が計画通りに進まなくなってしまうこともあります。
ここでは、矯正歯科治療中に起こりやすいトラブルについて、トラブルが起きたときの対処方法や日常生活における注意点について説明していきます。どのようなトラブルが起きやすいかをあらかじめ知っておくことで、もしトラブルが起きたときでも冷静な対応をとることができるかと思います。
矯正治療中に起こりうるトラブルについて
矯正歯科治療中に、ワイヤーの破折や接触による痛みを生じることがあります。そうした偶発的な事項について、また、それら偶発事項への対応の仕方について解説します。
ブラケットの脱離
マルチブラケット法では、ワイヤーとブラケットの存在は必須であり、ブラケットが歯から脱離すると、歯の動きが生じなくなります。ブラケットは動的治療終了時に外せる程度の接着力であるため、矯正歯科治療にブラケットが脱離することがあります。
予防と対処法
矯正歯科治療中に硬いものを食べないように注意が必要です。かみ合わせの強い(ディープバイト)場合は、咬合挙上などの処置が必要になる場合もあります。
また、脱離した場合には、患者さんにできるだけ早く来院してもらいリカバリーすることが大切です。脱離したまま長期に放置すると、ワイヤーの破折や歯肉の退縮など、二次的なトラブルが発生することもあります。
ブラケットの粘膜・舌への接触
ブラケットは角があったり、フックがついていたりするため、装着初期には粘膜・舌と接着して違和感を誘発します。特に、リンガルブラケット矯正の場合、下顎に装着したときに舌への違和感が出ることが多いです。
予防と対処法
次第に軽減していくので、3日~2週間程度で慣れてくるということを患者さんに事前に知っておいてもらうことが大切です。

発音障害
発音障害に関しては、リンガルアーチ、トランスパラタルアーチなど歯列の内側に装着する装置の場合に、違和感を覚えやすくなります。特に、リンガルブラケット矯正の場合、上顎に装着すると発音に影響が出やすく、音として「さ行」「た行」「ら行」が装着初期に発音しにくいといわれています。
(トランスパラタルアーチ:口蓋を横切る矯正線で左右臼歯を連結した固定用の装置)
予防と対処法
装着後、舌が順応するまで、発音障害があります。個人差はありますが、通常は数週間で症状は軽減してきます。最近は違和感の少ない小型の装置を使用することで、順応しやすくすることができます。
口内炎
口内炎は機械的な刺激(ブラケットが粘膜に触れるなど)だけが原因ではなく、患者さんの習癖も影響することがあります。頬粘膜内側に口内炎が頻発する場合は、口腔周囲筋の緊張が強かったり、口呼吸により口腔内が乾燥していたりすることも多いと思われます。舌側装置が誘発する口内炎なども舌位や舌癖、食いしばりなどが影響していることがあります。食いしばる癖があると舌を歯に押しつけていることが多いです。そのような環境でリンガルブラケット装置を装着すると、違和感も強く舌にも痛みを覚えます。
予防と対処法
通常は1週間程度で消失していきますが、長期に喪失しない場合は歯科の受診を勧めます。
また、マルチブラケット装置による治療の際、最後臼歯に装着したチューブが粘膜にあたる場合は、歯の動きを阻害しないように軟性レジンなどでカバーしておくと違和感が軽減します。
患者さんの習癖が影響している場合は、MFT(口腔筋機能療法)を行うことで軽減するということもあります。MFTは、口の周りにある筋肉の働きを正常化することを目的として開発された機能訓練療法です。
ワイヤーの破折
ワイヤーは矯正歯科治療のステージに応じて太さ、硬さ、材質を変えていきますが、治療中に破折することもあります。折れた末端が舌に接すると痛みが出るため患者さんも気づきますが、ブラケットの境目で折れている場合は患者さんも気づかず、歯の位置がずれてしまう場合があります。
予防と対処法
食いしばりのある患者さんはワイヤーの破折が生じやすいので注意が必要です。
歯石の沈着
下顎前歯の舌側にブラケットやフィックスリテーナーを装着していると、歯石が沈着しやすくなります。歯石が沈着すると歯の動きを阻害したり、歯周病のリスクも高くなったりしてきます。
(フィックスリテーナー:両側犬歯をバンドや接着剤を使って固定し、舌側からワイヤーで連結する方法)
予防と対処法
定期的な歯石除去が必要で、保定中でもワイヤー固定をしてある場合は定期的な歯科受診が必要です。
歯科矯正用アンカースクリューによる歯肉の腫脹、アンカースクリューの脱落
歯科矯正用アンカースクリューとは、口腔内の顎骨に植立し、固定に使用するスクリューです。歯科矯正用アンカースクリューは粘膜上に一部が露出しているため、食物残渣が停滞し、歯肉の炎症を誘発することがあります。また、スクリューが緩んで脱落することもあります。
予防と対処法
歯科矯正用アンカースクリュー植立後、2週間経過時から歯肉上のスクリューヘッド部の清掃を行うことが大切です。矯正装置と同様に食物残渣によるプラークを除去し、丁寧に清掃します。
装置の埋入
マルチブラケット装置による治療の際、時としてワイヤーの一部が歯肉を強く圧迫してしまうことがあります。また、リンガルアーチを装着した場合、前歯舌側の部分が粘膜に埋入することがあります。
予防と対処法
必要に応じて一部装置の除去や装置自体の再設計を考慮する場合もあります。
レジン床の圧迫による口腔粘膜の疼痛
床矯正装置(保定装置など)の場合は、辺縁部が不適合であったり、鋭利であったりすると、口腔粘膜に強くあたり疼痛や潰瘍(褥瘡性潰瘍)を引き起こすことがあります。
予防と対処法
一度装置を外し、傷が癒えてから再度正確な位置に装着していきます。装着時に、装着感や発音などに違和感があれば、歯科医師に申し出てください。そうすることでトラブル回避につながります。
まとめ
矯正歯科治療中は、さまざまな装置を口腔内に装着するため、いろいろなトラブルが起こることがあります。よく起こりうるトラブルとしては、「ブラケットの粘膜・舌への接触による違和感」や「装置の装着初期の発音障害」、「装置の装着が影響する口内炎」などがあります。これらのトラブルの多くは、1週間~2週間程度で慣れてくるケースがほとんどです。そのため、しばらく様子をみていただいて問題ありません。
しかし、トラブルによっては早めに対処が必要なものもあります。例えば、「ブラケットの脱離」や「ワイヤーの破折」、「歯科用アンカースクリューの脱落」などといったトラブルの場合、トラブルを長期間放置しておくと、歯の位置がずれて治療計画が狂ってしまったり、二次的なトラブルにつながったりすることもあります。このような場合は、早めの歯科受診が必要となってきます。
矯正歯科治療は、多くの症例で2年~3年といった長期の治療期間を要します。歯科医師も患者さんも気を付けていたとしても、トラブルは起こってしまいます。もしトラブルが起こったときには、自己判断で放置したりせずに必ず歯科医院に連絡して、対応を相談することが大切です。
歯並びはなぜ大事なのか
2022年1月21日
歯科医師は診療で多くの患者さんの口腔内を拝見しますが、実はすごくいい歯並びの人というのは、そんなに多くはありません。多くの人は、少しくらいの問題を抱えていても普通に生活を送っています。「歯並びや嚙み合わせが悪くても、特に不便を感じていない」「自分の歯並びは、チャームポイントで個性だと思っている」など、歯並びが悪くても矯正歯科治療の必要性を感じていないという人は多いのではないでしょうか。
矯正歯科治療を希望する人の多くは、見た目といった審美面の改善を主訴として来院します。しかし、歯並びを改善することは、審美性だけでなく機能性も改善するなど、多くのメリットが存在します。
ここでは、歯並びがいいことのメリットやなぜ歯並びが悪くなってしまうのかについて解説します。
正しい歯並びとは
正しい歯並びの条件として、まずは上下左右の歯がきれいに並んでいて食物が良く噛めること、そして上顎や下顎、頭蓋骨に付随する筋肉のバランスが良く、機能的な運動も良好であることなどがあります。
歯並びが正しく、嚙み合わせの良いことを「正常咬合」といいます。永久歯の歯列がきれいな馬蹄形をしていて、緊密な咬合により上下顎の歯列の調和がとれていることは、その人の健康状態と密接に関連してきます。
しかし実際の診療では、正常と異常を明確に区別することが困難な場合も多く、不正咬合(歯並び、噛み合わせの異常)は正常からの逸脱の程度によって判断することが多いです。
きれいな歯並びのメリット
矯正歯科治療などによって歯並びを改善することで、口腔内の状態が良くなるだけではなく、全身的にも精神的にも多くのメリットがあります。
口腔に対するメリット
口腔に対するメリットは、口元が美しくなるだけでなく、他にも様々なメリットがあります。
よく噛めるようになる
歯は、まず「咀嚼」、つまり噛んだり食べたりという、最も重要な役割があります。また、「歯ごたえ」や「歯ざわり」を感じるうえでも重要な役割を果たしています。したがって、歯は食事を楽しむうえで大変重要になります。
歯は消化器系の臓器の一つです。咀嚼とは、口から入った食べ物を噛みきったり砕いたりし、すりつぶして、胃や腸で消化吸収するための最初の手助けをする行動であるといえます。犬歯で捕えて、切歯で噛みきり、臼歯で砕きすりつぶすなど、それぞれの歯には役割があります。正しい歯並びで、このような役割が効率的に行われると、唾液腺から分泌される消化酵素が担う消化活動も効率的に行われることになります。
虫歯・歯周病の予防になる
例えば、凸凹の激しい歯並び(叢生)では、歯磨きが非常にしにくいため、食物残渣が歯面に残り、細菌が繁殖して歯垢になります。さらに進行すると歯石になります。つまり、叢生だと歯垢の除去がうまくいかないため、虫歯になりやすく、また、歯石が沈着して、歯肉炎や歯周病に罹患しやすくなります。
よく不正咬合は虫歯や歯周病の「誘因」になるといわれていますが、これは「直接的な原因ではない」という意味です。不正咬合は、虫歯や歯周病になりやすい環境を助長するといえます。
口唇が閉じやすくなる(鼻呼吸)
歯並びが悪く口唇の閉鎖が困難な人では、口呼吸が生じます。歯並びを改善して、口呼吸でなく鼻呼吸をするようになれば、鼻から空気を取り込む際に、鼻がフィルターの役割を果たし、ごみを取ってくれます。また、冷たい空気が直接、気道や気管に入らないように湿度を高めてもくれます。
発音がしやすくなる
歯並び、噛み合わせは、発語や発音においても大切な働きをしています。矯正歯科治療を行うと、出っ歯は唇がしっかり閉じるようになって、受け口は上顎の前歯が下顎の前歯を被う正しい関係になり、開口は上下の歯がきちんと閉じます。こうなるといろんな発音障害は改善します。

全身に対するメリット
口の健康と全身の健康は密接に関連しています。きれいな歯並びによって、姿勢が良くなったり、持続力や集中力がアップしたりするといわれています。
顔の形が整う
唇と歯はお互いに密接に関連しています。歯が出ていれば、唇も当然外側に出ますし、逆に歯が内側に入っていれば、唇も内側に引っ込んだ状態になります。つまり、歯並びが改善すると、顔貌にも変化が現れます。
体調がよくなる・免疫力が上がる
先ほど「口唇が閉じやすくなる(鼻呼吸)」の項目で、鼻の役割を述べましたが、他にも鼻は細菌感染の防波堤となり、免疫機構の一翼を担っています。そのため、口呼吸をするようになると、場合によっては、気管や肺の疾患など、全身の健康に対して悪影響を及ぼす可能性も起こりえます。
また、不正咬合は頭痛や肩こり、腰痛のような全身的な疾患の誘因となることもいわれています。
患者さんのQOL(quality of life)の向上
歯並びを改善することで、自信にあふれた笑顔を作り出すことができます。患者さんの中には、現在の歯並びや噛み合わせや顔貌に劣等感を持っていて、自信を喪失し、社会生活に困難を感じて、審美性の改善という観点から心理的・社会的に満足できる状態を求めて、矯正歯科治療を希望する場合も少なくありません。このような場合、歯並びを改善することは、患者さんのQOLの向上につながります。
悪い歯並びの原因
なぜ歯並びのいい人と悪い人がいるのでしょう。乳歯から永久歯へと正常に生え変わりが完了すれば、誰もが良い歯並びを獲得できるはずですが、現実は歯並びがいいという人はそう多くはありません。歯並びが悪くなる原因には、何があるのでしょうか。
不正咬合の原因は、単一の病因によって発症するものではありません。顎骨や歯の大きさ、形状といった個人が有する形質自体が不正咬合の素材であり、これら素材の形態学的バランス、成長発育、さらに生体が内外から受ける様々な刺激が不正咬合を成立させる要因となります。それらは単独、あるいはいくつかの因子が組み合わさり直接、あるいは二次的に不正咬合の原因となります。
歯並びの悪くなる原因について、乳歯の早期喪失のほかに、考えられるものを挙げます。
遺伝的要因
不正咬合は、遺伝的要因と環境的要因が双方に密接にかかわりあい発症する多因子疾患です。両親から受ける遺伝は成長に大きな影響を与え、歯や顎骨にも関係してきます。
顎の大きさと歯のバランス
正常咬合を獲得するには、顎の大きさ、歯の大きさや形態のバランスがとれていることが必要です。
悪い習慣・習癖
口呼吸などの口まわりの悪い習癖は、歯並びに影響を与えることがあります。その結果、歯や歯列、歯槽骨、顎に不正な力がかかり、成長に障害をきたし、不正咬合の原因となります。
姿勢や身体バランスも重要な要素です。精神的、身体的なストレスとも大きな関係があるので、生活習慣の中で注意していくことが大切です。
硬いものを噛む習慣の減少
よく噛むことで上下顎骨は正常に発育し、機能向上へとつながります。食物性状も含めて、現代は柔らかい食物が多くなったことで、硬いものを噛む習慣が減り、歯並びにも影響を与えています。
まとめ
歯並びが正しく、噛み合わせがいいことを正常咬合といいます。歯並びや噛み合わせが悪いと、歯磨きがしづらく、歯および歯肉を清潔に、そして健康に保つことが難しくなります。また、咀嚼、発音といった口の機能を充分に発揮できないばかりでなく、顔貌にも好ましくない影響を与えます。矯正歯科治療は、口の健康や正しい機能を回復させるほか、調和のとれた美しい顔貌にすることで、自信にあふれた笑顔をもたらし、より豊かな人生の一助となります。
このように、矯正歯科治療を受けるメリットは多くあります。子供のころに治療をしなかったので、もう手遅れだとあきらめている人はいませんか?大人になってからでも矯正歯科治療を始めることはできます。矯正歯科治療に興味のある人は、ぜひ一度歯科医院に相談してみてはいかがでしょうか。

審美的矯正装置はどのようなものがあるのか?
2022年1月14日
「矯正歯科治療は子供のうちしかできないのでは?」と思っている人も多いかもしれませんが、近年は大人になってから矯正歯科治療を始める人も増えています。
大人になってから矯正歯科治療を行う場合に問題となることの一つとして、大人の場合、「あまり目立つ装置は仕事など社会生活を送るうえでできれば避けたい」ということがあります。このような問題を改善するために、審美的矯正装置(リンガル、セラミック、可撤式マウスピース型矯正装置)を希望する患者様も増えています。
今回は、代表的な審美的矯正装置の特徴について解説していきます。
審美的矯正装置
成人の矯正歯科治療は、子供とは異なる特徴を持っています。もちろん歯周組織の状態などの生物学的特徴も異なるのですが、成人特有の社会的・心理学的な特徴があります。例えば、成人のほうが装置外観などの審美性に対する要求が高くなる傾向があります。また、職業など社会的制約によって、治療期間や術式が制限されることもあります。例えば、しゃべることを職業にしている人の場合などは、活舌に考慮した矯正装置の使用が必要となります。
このように成人では、審美的な改善を求めて矯正歯科を受診するケースが増えていることから、メタルブラケットからセラミックブラケット、そしてリンガルブラケットによる舌側矯正などの新しい術式が開発され、広く普及しています。また、可撤式マウスピース型矯正装置も審美的矯正装置として多用されています。
セラミックブラケット
矯正歯科治療の中で最も多く使用する装置として、マルチブラケット装置があります。マルチブラケット装置は、多数歯(基本的には全歯)にブラケットやチューブを装着し、アーチワイヤーを介して三次元的な歯の移動を行い、良好な歯列や咬合を獲得する矯正治療法(一般的にワイヤー矯正といわれています)で用いる装置です。
マルチブラケット装置に用いられるブラケットの材質は、従来は金属製のものが使用されていました。しかし、メタルブラケットは治療中に装置が目立ってしまうという欠点があり、近年では審美性に優れている歯冠色に類似したセラミック製のブラケットも多く選択されるようになっています。
セラミックブラケットは歯質より硬いため、対合歯と接触すると歯が顕著に摩耗することがあります。このデメリットは、歯科医師がブラケットを接着させる位置を工夫することで対応していきます。
外見
装置が白いため、あまり目立ちにくいです。
コスト
メタルブラケットに比較して割高となります。
期間
メタルブラケットとほぼ変わらないといわれています。
違和感
口唇や頬の裏側に装置が当たることによる違和感があります。
清掃性
ワイヤーの接する部分、ブラケット周囲やワイヤーの下部が不潔域になりやすいですが、装置が直視できるため、リンガルブラケットと比較すると清掃しやすいです。手鏡などを使用して、自分で磨き残しの有無を確認
できます。
制約
基本的に歯のない症例以外、すべての症例に装着可能です。セラミックブラケットは、歯の唇側に接着する装置のため、上顎前突の症例では、装置によってさらに口唇が押し出されます。そのため、装置を装着した初期
段階では、少し気になるかもしれませんが、治療が進んでくれば落ち着いてきます。

リンガルブラケット
歯列の内側に装着するブラケットをリンガルブラケットといいます。歯の舌側面にブラケットを装着して行う矯正治療法のため、歯の唇側面にブラケットを装着する唇側矯正に対して、舌側矯正や裏側矯正などといわれています。「目立たない矯正装置」として開発されており、治療中に装置の露出がなく審美性に優れているため、多くの臨床の現場で実績を上げています。
外見
リンガルブラケットは固定式装置(取り外しのできない装置)の中で、最も審美的に優れた装置です。
コスト
装置、技工の費用が高額のため、また術者の高度の技術が必要なため、どうしてもコストが高くなります。
期間
リンガルブラケットによる舌側矯正は、唇側矯正と比較して治療期間が長くなるといわれていますが、熟練した術者が担当すればそれほど違いはないと思われます。
違和感
装置装着後、数週間は舌が装置に順応するまで、発音障害や違和感がありますが、個人差が大きいです。最近は小型の装置を使用しているため、順応しやすくなっていると思います。
清掃性
清掃性については、装置を直視できないため、比較的難しいといえます。舌側に接着する装置のため、舌や唾液に汚れをよって洗い流す自浄作用はありますが、より丁寧な口腔清掃が必要です。
制約
基本的に唇側矯正で可能な症例は、すべて適応可能です。
マウスピース型矯正装置
マウスピース矯正は、透明に近いマウスピース型の矯正装置を歯に装着して歯並びをきれいにする治療方法です。マウスピース型矯正は新しい治療方法ですが、ワイヤー矯正にはないメリットが多くあり、臨床の現場でも普及してきています。
外見
透明な装置のため、あまり目立ちません。また、取り外しができる装置なので、写真撮影など、いざという時には外すこともできます。
コスト
患者さんの歯並びの状態や治療範囲によって料金には大きな幅がありますが、治療範囲が全顎の場合は唇側装置と同じくらいになります。自費診療となり、歯科医院によっても料金は異なってきますので、詳細は歯科医院にご相談ください。
期間
コストと同様、患者さんの歯並びの状態や治療範囲によって大きく変わってきます。また、マウスピースは患者さん自身で装着していただくため、患者さんがどれくらい装置を使用するかも影響します。基本的には、ご飯の際や歯磨き時以外は装着するのが望ましい装置です。きちんと装着できない場合には、歯が目的の位置まで移動しないので、治療期間が延長することにもなります。
違和感
最初の装着時は違和感があり発音しにくいと感じることもありますが、慣れてくることがほとんどです。また、「仕事の関係で、人前でしゃべらないといけないので、発音が気になる」などといった場面では、取り外しができる装置のため、一時的に外すこともできます。
清掃性
可撤式の装置なので、食事や歯磨きの際に装置を外して行うことができます。外してからマウスピースの清掃と口腔清掃ができるので、非常に清掃性も優秀です。
制約
近年は適応症例が広がっていますが、すべての症例に適応できる装置ではないので、症例を慎重に選択する必要があります。例えば、骨格性の問題を含む難度の高いケースなどでは、適応できない可能性があります。
まとめ
近年、大人になってから矯正歯科治療を行うことも多くなってきており、審美的な矯正装置が求められることが多くなってきています。審美的矯正装置として代表的なものとしては、セラミックブラケット、リンガルブラケット、マウスピース型矯正装置があります。
それぞれ、審美性の程度やコスト、治療期間、装置の違和感、清掃のしやすさなど特徴が異なります。また、装置によっては適応症例に制限があるものもあります。残念ながら、どの装置もメリット・デメリットがあり、完璧な装置はないのが現状です。患者様が何を優先するのか、患者さんの状況によっても最適な装置は変わってきます。
当歯科医院でも、さまざまな審美的矯正装置による治療を行っております。審美的矯正装置に興味のある人は、ぜひご相談ください。

インビザラインについて
2022年1月7日
マウスピース型の矯正装置がある!ということはここ最近では徐々に広まっていると思います。ひと昔前の歯科矯正というと、銀色のはり金のようなワイヤーを歯の全面に貼り付けるようなイメージだったのではないでしょうか。
審美歯科が主流となっている近年では、歯科矯正も「もっと手軽に」「もっとオシャレに」「もっと可愛く」というような雰囲気になってきているような気がします。
海外人気アーティストのジャスティンビーバーがインビザライン(マウスピース矯正)で歯並びを治したらしいですね、その過程を写真に撮ってアップしていたようで、爆発的にインビザラインの存在が広まったのではないでしょうか。
海外における矯正治療
特に海外では、矯正して歯並びを綺麗にすることは当たり前、という認識の文化で、特にアメリカでは小さい頃に矯正治療をするという文化があるので、歯並びが悪い人の方が圧倒的に少ないため、必然的に海外の歯科矯正技術は非常に進んでいます。
〜インビザラインの歴史〜
インビザラインとは、1999年に米国アライン・テクノロジー社が開発したマウスピース型の矯正装置のことです。インビザラインはその後グローバルに展開し続け、現在世界100カ国以上の国で使用されていて、これまでに1000万人以上の方がインビザラインによる矯正治療を受けています。(2021年4月時点)
日本では2006年頃から本格的に展開し始めました。
〜インビザラインとは〜
歯並びを改善する「矯正治療」のことで、「マウスピース型カスタムメイド矯正装置」に分類されます。このマウスピースは取り外しができて、薄くて透明な矯正装置なので、快適で目立ちにくく、人前でも装着することができます。また、取り外しが可能なので食事も歯磨きも普段通り行えるという最大のメリットがあります。
インビザラインはマイナーチェンジを重ね、より幅広い症例の方に対応できるよう改善されています。

インビザラインの特徴
矯正中のお口のトラブルのリスクの低減
固定するワイヤー矯正のようにデコボコとしたワイヤー矯正は、口の中の粘膜に当たって痛みが出ることがあります。インビザラインは口の中を切る鋭いブラケットを心配することなく、スポーツや事故の際などに、口腔内に衝撃があっても、口の中の粘膜を傷つける心配がないので、普段通りにスポーツを楽しむことができます。
矯正器具が粘膜に当たって「口内炎ができてしまった」などというリスクも低減します。
また、マウスピースを装着したままでも水を摂取することは問題ありません。
取り外しができるので衛生的
マウスピースはご自身で取り外しが可能なので、普段通りの生活と同じようにお食事を楽しんだり、口腔内のケアを行っていただけます。歯ブラシやデンタルフロスなどが使用できます。そしてマウスピースも丸ごと簡単に洗浄できるので、衛生的に保ちやすく、ブラケットとワイヤーを用いた一般的な矯正治療に比べると虫歯になってしまうリスクを下げることができ、安心して使用できます。
食べたいものが食べられる
ワイヤー矯正だと硬いものや粘着性のあるものを食べる制限などがありますが、取り外しが可能なマウスピース矯正は、食事中は外して良いので、気にせず普段通り食事ができます。
お口の中にブラケットやワイヤーが設置された途端に大きな不自由を感じることになります。装着後時間が経過するにつれて違和感や異物感が小さくなってきますが、装着していない状態と比べるとストレスを感じやすいです。
矯正治療をはじめる前と同じように、好きなものを好きなだけ食べることができるのはインビザラインの大きなメリットのひとつです。
自由に食べられる幸せを毎日実感できると思います。
通院回数が少なくて済む
インビザライン以外のシステムの場合、約2~3週間のペースで来院し、その都度歯型を採り、新しいマウスピースを作製する必要がありますので、患者様にはそれなりの負担となります。しかし、インビザラインでは、基本的に1回歯型を採って3次元画像化技術とCAD/CAM技術により各ステージのマウスピースをまとめて作製し、お渡しします。
そのため来院回数を6~8週間に1回と減らす事が出来ます。
痛みが少ない
加える力が強ければ強いほど、歯がしっかり動いてくれ、かつ治療期間も短くなるイメージがあると思いまが、従来の矯正は強制力が強すぎて毛細血管がつぶれ、歯の移動に必要な代謝活動が阻害されていました。
当院はライトフォースと呼ばれる理論の元、治療中の痛みを軽減に成功しています。
簡単に説明すると「加える力を弱くする」ことです。従来に比較して1/2~1/5になります。
血管の弾力より弱い力をかけるため、毛細血管をつぶさない、骨の代謝活動を妨げないことができ、歯が動くスピードも速く痛みを軽減することができます。
金属アレルギーの心配がない
金属アレルギーは一度発症すると治療は難しいと言われています。インビザラインはポリウレタン製のマウスピースです。インナーなどの衣類やカバンなどから住宅用の断熱材としても使われているとても身近なプラスチック素材で、金属素材を全く使っていません。そのため金属アレルギーの心配が少ないと言われています。器具が目立たず自然な見た目で矯正治療を行うことができます。金属アレルギーだからと矯正治療をあきわめてしまわずに、適切な治療法による矯正を行っていきましょう。
歯がどの程度動くかコンピューターで確認ができる
光学スキャンでお口の型取りを行うアイテロエレメントを導入しております。
治療後にどんな歯並びになるか、事前に確認したいですよね?
歯型を採取することで現在の歯並びから治療後の歯並びをシュミレーションしてその場で確認することができます。
そのため、デジタル技術による分析でより精密な治療計画が立てられます。
ご自分がどのような歯並びになるのか確認できることで、矯正治療に対する患者様のモチベーションが高くなることが期待できます
まとめ
ワイヤーを使って歯を動かすという理論と、マウスピースを使って歯を動かす理論では、大きく異なります。マウスピースだけで歯を動かす矯正歯科医には、それに特化した技術と知識が必要になります。
インビザラインでは、年間の治療実績が豊富であるドクターをランク付けしており、当院は「ダイヤモンドプロバイダー」に認定されています。豊富な治療実績をもつ医院だけが認定されます。また、当院の担当医はインビザラインの「認定医」資格も取得しています。インビザラインのエキスパートである証明資格です。
一般的に抜歯が必要な方のマウスピース矯正は何度が高いと言われています。そのため経験が少ない先生にご相談するとマウスピース矯正はできませんと治療を断られることがあります。担当医の診断力、経験、知識の問題があるとマウスピース矯正で問題が生じます。インビザラインのマウスピース矯正は、患者様ご本人がマウスピースを交換することで歯を動かしていきます。矯正歯科医と患者様のコミュニケーションや信頼関係なども重要になってきます。
認定医のいる歯科医院でしっかりとカウンセリングや検査を行ってからはじめることをお勧めします。

さまざまなブラケット
2021年12月24日
こんにちは、世田谷区の三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科です。
一言に歯科矯正といっても、さまざまな矯正方法があるのを皆さんはご存知でしょうか。
今日は様々な種類の歯科矯正と矯正器具などについてご紹介していきたいと思います。
■ワイヤー矯正
ワイヤー矯正が一番、歯科矯正と言われて、パッとイメージの湧くものではないでしょうか。
ワイヤー矯正では歯の表面に「ブラケット」と呼ばれる矯正装置を装着します。
ワイヤーを通して、動かしたい方向に適切な力をかけることによって、歯を移動させることができます。
このワイヤー矯正のメリットは様々な症例の歯科矯正に対して、幅広く対応できることにあります。また比較的低価格で対応できるのもメリットです。
一方でイメージされる方が多い通り、目立つのも特徴です。また、装着によって、強い痛みが起きたり、金属で口腔内に傷つけてしまう恐れもあります。装置を基本的に外さないのがこのワイヤー矯正ですが、粘りの強い食べ物や硬い食べ物が制限される場合があります。
ワイヤーも一般的なメタルのもの以外にも、審美矯正と言われますが、プラスティック、セラミック、ジルコニア、ホワイトワイヤーなどがあり、これらの素材はメタルに比べて、目立ちにくいのがメリットです。ただし、金属に比べてやや価格が上がるのと、金属よりも強度が弱かったり、変色してしまう場合もあるので、完璧であるわけではありません。
またカラーエラスティックという種類もあり、これはその名の通り、装置がカラフルになっているので、目立ってしまう矯正を逆に楽しもうという発想です。
そして、矯正器具を改良したものとしてデーモン(セルフライゲーションブラケット)というものもあります。
デーモンは従来の装置より摩擦抵抗を少なくするように改良されているのが特徴で、より小さな力で歯を動かすことができます。それに伴い、痛みを少なくして、歯を早く移動させることができるようになりました。ブラケットが従来のものより小さくなっていますので、歯磨きも従来のものよりしやすくなったのも特徴です。
以下にワイヤー矯正の種類についてまとめてみました。
ーーーーーーーーーーーー
・メタル
世界でもっとも一般的な金属ブラケットです。
昔に比べて接着剤の発達によって、ワイヤーも目立たなくなり、もっとも金額的にも低価格となっています。
・デーモンシステム
アメリカのドクターデーモンによって開発されたシステムで、従来のものとは治療法が大きく異なることからハイテク矯正法とも呼ばれたりします。歯が動くために起きる痛みも小さく、治療期間も比較的短く済むという画期的な治療法です。
・ハイブリッド
プラスチック中にセラミックフィラーを閉じ込めた最新のハイブリッド素材です。
色もそれほど目立たず、価格もお手頃という両面のメリットを実現した素材と言えます。
・プラスチック
目立たないのが最大のメリットなのですが、矯正治療の仕組みとして、ブラケットの溝をワイヤーが滑ることによって、歯が動くという仕組みになっているため、プラスチックの場合、ワイヤーにこの溝が削られて、治療が遅くなってしまうという欠点がありました。
しかし、現在ではその点も改良され、金属と同等の期間で治療ができるようになっています。
・クリアスナップ(プラスチック)
従来のプラスチックブラケットにクリアスナップというキャップをかぶせたものです。
従来の矯正治療では、ブラケットにワイヤーを結びつけているのはオーリングという小さなゴムリングまたは細いリガチャーワイヤーというものを使用する方法しかなく、変色や外傷を与えてしまうなどのトラブルがありました。
クリアスナップはこれらのトラブルを解消し、摩擦も少なく、歯の移動もスムーズになりました。
・クリスタルプラスチック
プラスチックブラケットの最新改良版で、通常のプラスチックブラケットのポリカーボネート樹脂ではなく、ポリアミド樹脂に変えたことによって、透明感と光沢感が増しました。
・ニュージルコニア
ブラケットの中で一番美しく、透明感があって、強度にも優れています。

■裏側矯正
歯の表面ではなく、裏側にブラケットをつけて、ワイヤーを通すのがこの「裏側矯正」と呼ばれる矯正方法です。舌側に取り付けるので「舌側矯正」と呼ばれたり、リンガルブラケットとも言われます。
この裏側矯正は、通常の表面のワイヤー矯正と比較して、高い技術が必要です。従い、歯科医師と歯科技工士の技量が必要となります。また高い技術が必要となるため、適用できる症例の範囲も限られ、金額も通常のワイヤー矯正と比較すると高価格になります。
裏側に装着しますので、矯正していることが目立たないのは大きなメリットです。
また裏側についているので、口内に傷をつけてしまうというリスクが、通常のワイヤー矯正よりも低いのもメリットの一つと言えるでしょう。
予算や患者様のニーズにもよりますが、表面矯正と裏面矯正の両方を活かしてより歯並びを綺麗にするコンビネーションも可能です。
■マウスピース矯正
透明に近いマウスピース型の装置(アライナー)を装着して歯並びを綺麗にする方法がこのマウスピース矯正です。一人一人の歯の状態に合わせてマウスピースを作成し、治療の段階に合わせてマウスピースを取り替えて、徐々に歯を動かして、矯正していきます。
こちらの代表格がインビザラインです。
これはこのブログでも何度も登場しているので、細かい説明は割愛しますが、今日はインビザラインで使用するシステムを一部紹介したいと思います。
・光学スキャナ(i-Tero)
従来はシリコン印象材で歯型を採っていたのですが、患者様に息苦しさなど大きな負担をかけていました。このシステムを使うことによって、ペン型のカメラで口の中を撮影するだけ
で比較的簡単に歯型が採れるようになりました。
シリコン印象材の場合、歯から材料を取り外す時にちぎれてしまったり、変形してしまったりする問題がありましたが、スキャナではそれらの問題がないため、より精密に歯型を採ることができるようになりました。
・クリンチェック
インビザライン独自のシミュレーションソフトです。
このソフトを使用して歯を動かす順序や対明後、部位を設定できます。設定することにより歯を目標の位置まで最短で動かすことができます。
こうした精密なシミュレーションと実際の治療にずれがないかを緻密に確認しながら軌道修正しながら治療を進めていくことができます。
・アウトカムシミュレーション
アウトカムシミュレーションとは治療後の歯並びをすぐに作成できる簡易的なシミュレーションです。このシミュレーションを使用して、治療後のイメージを患者様にビジュアルでお伝えすることができます。治療後どうなっていくかを治療前にイメージでき、治療への不安を少しでも払拭することができればと思います。
いかがだったでしょうか。
今回は矯正の種類と機器などについてご紹介してきました。
一言に矯正といっても多種多様で、患者様のニーズに合わせて様々なものをご提案することができます。
目立たないマウスピース矯正をはじめたいけど状態によって最初はブラケットで矯正治療をはじめていかなければならない場合も目立たない裏側矯正やブラケットがあるので安心して下さい。
矯正治療をご検討の際はお気軽に当院までご相談ください。

マウスピース矯正とは?ワイヤー矯正との違いやメリット・デメリット
2021年12月10日
皆さんの中には、「歯の矯正」といえば、金属製のワイヤーを長期間にわたり装着する、従来からの矯正装置を想像する方が多いかと思います。「歯並びは気になるけれど、矯正治療中の矯正器具などの見た目に抵抗を感じる」という方は多いのではないでしょうか。
近年、矯正歯科治療の世界では、さまざまなイノベーションが起きています。その中でも、「アライナー」などの可撤式マウスピース型矯正装置による治療を行うケースは多くなっています。マウスピース型矯正装置は、透明に近いため目立ちにくく、取り外しが可能な矯正装置です。
今回は、マウスピース矯正とワイヤー矯正との違いやメリット・デメリットについて解説します。
■マウスピース矯正
マウスピース矯正とは、プラスチック製の透明に近いマウスピース型の矯正装置(アライナー)を歯に装着して、歯並びをきれいにする治療方法です。
アライナーは、患者さんの口腔内を3Dスキャニングデータを用いて作製します。
この一人一人の口腔内にあわせて作製したアライナーを装着し、治療の段階にあわせて新しいアライナーに交換しながら徐々に歯を動かして、歯並びを矯正します。
■マルチブラケット法
ワイヤー矯正ともいい、「歯の矯正」といえば、この治療法をイメージする人も多いでしょう。
マルチブラケット法とは、歯の表面に一つずつブラケットという器具を貼り付け、その溝にアーチワイヤーを通して、三次元的に歯を動かす治療方法のことです。患者さん自身で取り外すことはできない装置になっています。マルチブラケット法は、治療のできる適応範囲も広く、矯正治療では最もよく行う治療法です。
歯の表面にブラケットを貼り付けるため、金属製のメタルブラケットを使用する場合は装置が目立ってしまいます。そのため審美的な改善を求めて、審美ブラケットや舌側矯正といった審美的矯正装置も広く普及しています。
審美ブラケットとは、ブラケットが透明や白色の目立たない色で、審美性が高い装置のことをいいます。セラミック製やジルコニア製、プラスチック製のものなどがあります。
また、歯の表側ではなく裏側に装着するブラケットをリンガルブラケットといいます。表側からは見えないので、周囲の人に矯正していることがわかりにくいことが大きな特徴です。この矯正装置を使った矯正を「舌側矯正」といいます。

■マウスピース矯正のメリット・デメリット
どの矯正治療法にもいえることですが、マウスピース矯正にもメリットと共にデメリットが存在します。それぞれの治療法の特徴をきちんと理解したうえで、経験豊富な矯正専門医に相談し、しっかりと検査・診察を行い、患者さんの希望に沿った治療法を選択していくことが大切です。
メリット
○治療中でも目立ちにくい
マウスピース型矯正装置の最大のメリットは、「治療中でも目立ちにくい」という点です。マウスピース型矯正装置は、透明に近い装置のため目立ちにくく、矯正中であることを周囲が気づきにくいです。
人と会ったり人前でお話したりする機会の多いお仕事の方でも安心して装着でき、従来のワイヤー矯正に躊躇していた方でも治療を行うことができます。
また、ワイヤー矯正と違い金属を使用しないため、金属アレルギーの心配はありません。
○取り外しが可能
マウスピース型矯正装置は取り外し可能なため、治療中でも装置を取り外して食事や歯磨きができ、口腔内を清潔に保つことができます。食事や歯磨きの際に、患者さんへの負担が少ないことがメリットです。
マルチブラケット装置は固定式の装置のため、食べ物が装置に付着したり挟まったりすることも多く、歯磨きも大変です。ブラケットとワイヤーの隙間を歯ブラシのみで清掃するのは難しく、歯間ブラシなどの口腔ケアグッズも合わせて丁寧に磨く必要があります。そのため、歯磨きに時間がかかり、磨き方にもコツが必要となります。ブラケット周囲に汚れが残ってしまうと、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
一方、マウスピース型矯正装置は取り外して歯磨きができるため、フロスなども通常通り使用することができます。
また、マウスピース型矯正装置は、写真撮影など特別な行事がある場合、短い時間であれば装置を取り外すことができます。その間は装置を取り外し、終了後再び装着してください。
○装着感が良い
マウスピース型矯正装置は、薄くて表面が滑らかなので、口腔粘膜を傷つけることや装着時の違和感が少ないです。
マルチブラケット装置は、口唇や頬の裏側に装置が当たり、違和感があります。特に舌側矯正は、装着後から数週間、舌が順応するまで発音障害や違和感が出やすいです。
マウスピース型矯正装置も、装着時は違和感や発音がしにくいことがあります。しかし、装置を外すことも可能ですし、慣れてくれば発音しにくいということもあまりありません。
○治療時間・通院回数を減らせることも
マウスピース型矯正装置の種類や症例によっても異なる場合がありますが、マウスピース型矯正装置はメンテナンスが少なく、通院は6~8週ごとに一度なので、ワイヤー矯正よりも通院回数を減らすことができます。
ワイヤー矯正は3~4週ごとに一度、歯科医師の手作業によるワイヤー調整が必要になります。そのため、一回の治療時間も長くなります。マウスピース型矯正装置は、マルチブラケット装置のように、装置の取り外しや再装着の手間がかからないため、一回の治療時間は短い場合が多いです。
デメリット
○適応症例が限られる
マウスピース型矯正装置の基本的な適応症は、軽度の叢生や歯間空隙などの比較的難度の低いケースに限るとしてきました。しかし、近年はアタッチメントの併用などで適応範囲が広がっています。
重度の叢生や骨格性の問題を含むなどの難度の高いケースは非適応症例ですが、マウスピース型矯正装置単独の治療では難しい場合でも、他の治療法と組み合わせることで治療が可能になるケースもあります。「自分の歯並びはマウスピース矯正で治療可能なのか?」と気になっている方は、一度歯科医院にご相談ください。
○長時間マウスピースを装着しなければならない
基本的に、マウスピース型矯正装置は、食事中や歯磨き時以外は装着するのが望ましい装置です。使用するマウスピース型矯正装置の種類にもよりますが、一日17~20時間装着できない場合には、歯が目的の位置まで移動しないので、治療期間が延長したり、治療結果が思わしくないということになったりします。
また、マウスピース型矯正装置を数ステップ分まとめて受け取った場合は、装置の交換時期をしっかり守っていただくなど、使用する患者さんの自己管理がとても重要となる治療法です。
○マウスピースを装着したまま飲食できない
飲食するときはマウスピース型矯正装置を外し、再び装着するときは、歯磨きをしてマウスピース型矯正装置を洗ってから装着します。
装着したまま飲食すると、マウスピースに食べかすなどがついて虫歯や歯周病の原因になってしまったり、マウスピース自体が傷んでしまったりする可能性があります。また、熱いものが触れると、マウスピースが変形してしまうリスクがあります。水を飲む場合は問題ないですが、マウスピースを装着したままコーヒーや紅茶などを飲むと着色の原因となるので避けましょう。
このように、飲食を行うごとに歯と装置を綺麗にしなくてはいけないので、間食の習慣がある方などは大変に感じるかもしれません。人によってはライフスタイルの改善が必要になってくるかもしれません。
また、食事や歯磨きの際に装置を取り外すので、紛失しないように注意が必要です。マウスピースは小さくて透明なため、外したときは必ずケースに入れるようにしましょう。
■まとめ
マウスピース矯正とは、透明に近いマウスピース型矯正装置を装着して、歯並びをきれいにする治療法です。
透明に近い装置のため目立ちにくく、取り外し可能な装置のため、口腔内を清潔に保つことができるなどの多くのメリットがありますが、症例によっては適応できないものもあるといったデメリットもあります。
歯並びを治すことは、見た目を改善するだけでなく噛み合わせも改善することができ、健康にもプラスになります。「マウスピース矯正に興味がある」「マウスピース矯正が気になっているけど、自分はできるのか」と悩んでいる方は、ぜひ一度歯科医院の矯正専門医にご相談ください。

リンガルブラケット
2021年12月3日
ワイヤー矯正は目立ってしまうと考えている方も多いでしょう。
最近はあまり目立たない透明のマウスピース型の矯正装置や透明、白のブラケットでプラスチック製やセラミック製のアイテムもあります。
状態によってはワイヤー矯正が必要な場合があります。
今日は裏側に装置をつける「リンガルブラケット矯正」に関してお話していきます。
■リンガルブラケット矯正とは
リンガルブラケットは、歯の裏側に矯正装置を装着するワイヤー矯正治療です。
プラスチックやセラミックなど、目立ちにくい材質を使用しても、歯の表面にブラケットが装着されていた場合、近距離では見えてしまいます。
リンガルブラケットは歯の裏側の根元あたりにブラケットを付けるため、一切見えることがありません。
特に人と接する職業の方に良く選ばれています。
専門の知識と技術が必要なので、矯正医師の中でも対応可能な先生は限られます。
通常の表側矯正とは異なるノウハウなどが必要で、リンガルブラケット矯正法を実施可能なクリニックは多くありません。
矯正のための装置を使ってどうやって歯を移動させているのか…気になりますよね。矯正目的のブラケットを専用の接着剤を用いて歯にくっつけ、そしてブラケット部分にワイヤーを装着します。
ブラケットの断面部分にはカタカナのコの字の形をした箇所があり、この部分にワイヤーが装着されます。さらに結紮を行った結果、ワイヤーがもたらす力が結果的に歯に伝わるようになるのです。
セルフライゲーションブラケットの場合は、ブラケットに結紮目的のシャッターなどがあり、ゴムなどを使った結紮を行う必要もありません。
一般的なブラケットであれば結紮するとワイヤーとスロット部分に摩擦が発生します。この摩擦は障害となっていて、歯の移動に関してもデメリットがありますし、痛みにも繋がります。
当院ではクリッピーというシステムを活用しています。
クリッピーによる歯列矯正治療はセルフライゲーションシステムによって、弱い力で歯を動かすことができるので、歯が動くときの痛みが軽減されます。
このシステムでは、ブラケットにシャッター構造を取り入れています。ワイヤーをシャッター部分に通すことで通常よりも摩擦が少なくなりました。弱い力で歯が動くので、矯正による痛みがあまりなく、治療期間も短くなるメリットがあります。
シャッター構造が小さく装置が薄いため、装置装着後の発音のしにくさも軽減されます。サイズが小さいため、装置間の距離が広くて、ワイヤーの弾性をうまく利用できます。弱い力で歯の移動が素早くできるので、治療期間が短くなります。
痛みの軽減や期間の短縮のキーポイントが、矯正装置間の摩擦の度合いです。この摩擦が小さければ痛みの軽減、短期集中を可能にします。従来の矯正装置は結紮線と呼ばれるもので、矯正装置を固定していました。結紮線を利用するとどうしてもブラケットとワイヤー間で摩擦が生じてしまい、痛みや治療の長期化の原因となっていました。しかし、クリッピーシステムは結紮線を利用しません。そのため、痛みの軽減、治療期間の短縮を可能にします。
リンガルブラケットは日本人に多い歯の症状に幅広く対応可能です。日本人は八重歯の人も多いですが、八重歯に表側矯正の装置を使うと、笑ったりしたときに口の中や唇を傷つけるリスクが高くなります。リンガルブラケットでは舌側に装置を使用するので、口の中を怪我することがありません。八重歯にも対応可能なのが特徴です。
一度あたりの診療を短くできる点は大きなメリットです。従来のマルチブラケット装置では来院ごとにゴムやワイヤーをつける・外すという作業が必須でしたけど、セルフライゲーション装置においては必要ありません。

■リンガルブラケットの種類
○ハーフリンガル・マルチブラケット
上の歯を舌側矯正、舌の歯を表側矯正によって治療する方法になります。
上顎の装置を裏からのリンガル矯正、下顎の歯の装置を透明度の高いセラミックブラケットで行う治療です。下顎の装置は表になるので、舌が矯正をするための装置に接触しづらく、しゃべる際に困ることも少なくなります。治療に必要な期間は、裏側からの矯正に比べて少し短くなるメリットがあります。表側の矯正は気軽に装着可能で価格面もお財布に優しいと言われています。しかしデメリットとしては、矯正装置が他人から見られやすいという点が挙げられます。
○フル・リンガル
この矯正では、上下顎ともに裏側に矯正装置を取り付けるので、誰か他人からの目線を気にする心配もなさそうです。裏面に装着した下顎の矯正装置は舌の動きによって接触するケースもあるため、話す際に発音しづらい時期もあるかもしれません。ですが発音の練習をすれば徐々に慣れていくでしょう。舌側矯正にある発音、咀嚼障害が最小限に抑えられるでしょう。ブラケットの厚さは約1.5mmと非常に薄く、歯面に密着していて外れてしまう心配も基本的に不要でしょう。ちなみにデザインは口の中における自浄作用にも効果的で非常に衛生管理が楽です。
■まとめ
当院のリンガル矯正用ブラケットは結紮線を使用しないため、一般的なマルチブラケット装置に比べ、清掃性に優れています。また、結紮をしないこと、装置自体も薄く作られているため違和感が若干軽減されています。治療期間、痛み、清掃性、矯正治療中の違和感等のメリットが多い装置です。
前歯が出ている方は歯の表に装置を装着すると、厚みが加わってしまい、前歯を強調してしまうことになるでしょう。ですが、歯の裏に装着するリンガルブラケット矯正装置だと、そんな不安も必要ないでしょう。また、リンガルブラケット矯正装置は前歯を引っ込めやすい特性をもっているので、出ている前歯が気になる方は特に適しています。
患者様お一人お一人の噛み合わせ・歯の形態等を考慮した装置で治療させていただきます。
費用を抑え、目立ちづらくかつ取り外しのしない装置を希望の場合ハーフリンガルをお勧めしております。目立つ矯正装置に抵抗があり、矯正治療をためらっていた方、お悩みの方は是非一度ご相談ください。

後戻りについて
2021年11月26日
「歯科矯正」というと、みなさんは「歯並びの見た目を綺麗にする」という印象を持たれている方がもしかしたら多いのではないでしょうか。
実は歯並びは単純に見た目の問題だけではなく、咬み合わせを治すという意味でも重要な役割があり、さらに咬み合わせは人間の心身にも関係しています。
ただ歯を並べて綺麗にする治療ではなく、本来あるべき歯の機能を最大限に引き出してあげる治療です。矯正治療のあとは保定といって安定した咬み合わせを維持することが必要です。
■歯並び・咬み合わせとメンタル
矯正治療で得られることは見た目の美しさ、健康、機能、メンタルがあります。
シンプルに見た目を気にされる方にとって、歯並びの悪さはメンタルに直結しています。あまり口の中が目立たないように口を押さえて話したり、笑うのも少し控えめにしたりと、見た目にストレスを抱きながら、振る舞っている方もいらっしゃいます。
歯並びの悪さによって、コミュニケーションに自信を持てなかったり、人と会うことにさえ後ろ向きになってしまうケースもあるようです。
こうしたストレスを矯正治療によって、歯並びを綺麗にすることで、自分に自信を持って、コミュニケーションに臨めるようになり、メンタルを安定させられる場合もあります。
長い矯正期間を乗り越えるためには、長期的なやる気を育てることも必要になります。
ご自身で保定期間は管理していただくことが多いです。自己管理は患者様自身でしっかり行って頂かないと十分な結果が出ません。
■歯並びや咬み合わせとお口の健康
歯並びが悪いとお口の健康にも悪影響を与えます。
一つは歯並びがデコボコしていると、歯磨きが難しくなり、時間をかけて歯磨きをしても、汚れを取りきれないことが多くなることです。
デコボコした歯並びに対してはタフトブラシなどの道具を使用することや、しっかり小刻みに歯ブラシを当てないと汚れを落としきれません。
取り残した汚れの中の細菌が、むし歯や歯周病を引き起こす原因となり、歯並びが悪いと歯の健康を損なう恐れが高まります。
また咬み合わせが悪い人の中に、口を閉じることが大変でいつも口が空いており、口呼吸をいつもしてしまうという事例は多く見受けられます。このような方の場合は口の中がどうしても乾燥しやすくなってしまうので口臭、風邪、睡眠時無呼吸症候群、アレルギーなどのリスクを高めます。また、むし歯や歯周病の進行を防いでくれる唾液が、歯や歯ぐきに行き渡らなくなり、むし歯や歯周病を生み出しやすい状態を作ってしまいます。
こうした点で、歯並びが悪いとむし歯や歯周病のリスクが高まり、これは矯正治療によって軽減することができます。
また、口が開いた状態が長く続けていると、口の周りの筋肉の発達が妨げられてしまいます。唇と閉じる筋肉がしっかり発達しなければ、口を閉じにくくなり、悪循環を招きます。そして、これによって姿勢にも影響し、前かがみになりやすく、結果的に背骨に影響する場合もあります。
咬み合わせは、身体の使い方のバランスに影響します。噛む力が均等に使われないため、結果的に身体を左右バランス良く使えていないということに繋がります。そうなると、私たち人間は無意識のうち、身体のバランスをとるために不自然に重心をずらして動くようになるのです。

■矯正治療だけでは終わらない
矯正治療が終わり、見た目の美しさ、安定した咬み合わせを維持するためには保定期間がとても重要です。
矯正治療直後は後戻りがしやすい時期です。矯正治療で「歯が動く」=「他の要因でも動いてしまう可能性がある」ということです。
特に矯正治療後は歯の周辺組織が安定せず、動きやすい、つまり後戻りしやすい状態にあります。矯正治療後は少なくとも1日20時間、保定装置を装着することが必要となります。
せっかく矯正治療が終わったのにと思う方もいらっしゃると思います。美しく整った歯をキープするための大事な過程が保定期間です。保定装置をきちんと付けていれば、後戻りはほとんどしません。逆に保定装置の装着を忘れる、装着期間が短いと徐々に歯並びは戻っていきます。
保定装置は少しずつ装着時間を減らしていき、最終的に装着をやめるという形で保定を進めていきます。舌の癖や口呼吸などの癖がある方はどうしても後戻りしやすい傾向にあるので、装着時間を減らしつつ、歯並びに変化がないか確かめながら、保定装置の終了を目指します。
正しい歯並び、咬み合わせを保つことは審美的な面、健康面にも大きなメリットとなります。保定期間中は今までの治療の財産をケアする期間と思って頂き、装置の着用をしっかり行ってください。
また、装置や、ワイヤーを下の前歯の裏側につけておくような器械的な保定と自然保定があります。
自然保定とは、動的矯正治療で得られた正常な状態を、装置を使わずに上下の歯の咬み合わせや歯相互の隣接面接触、あるいは口腔周囲の機能などによって維持することです。後戻りの原因は口腔周囲筋の不均衝、安定するまでの歯根膜線維の弾性力が原因となります。
○口腔周囲筋
歯列弓を正常に維持するためには、口腔周囲筋の機能力すなわち外側からのバクシネーターメカニズム(頬筋機能機構)と内側からの舌筋の作用との力の均衡がとれている必要があります。
口輪筋、頬筋、上咽頭収縮筋という筋が歯列の外側から機能力として舌圧に拮抗し、歯列や咬合の保全に関与するということです。
歯列上では、口唇、頬筋など外側から作用する力と、内側から働く舌の機能力とのバランスが保たれている。口輪筋および口角から始まる頬筋は、歯列を外側から帯状に包み、臼歯後方の翼突下顎縫線で上咽頭収縮筋と結ばれています。
○咀嚼筋
正常な咬頭嵌合は歯列の維持に大切である。その状態で咀嚼筋が強く緊張する食事やかみしめ時には歯列に強い力がある。下顎安静位での咀嚼筋は強緩し、上下歯列の間には一般に1~3mmの安静位空隙がある。
このように歯列には口腔周囲筋や咀嚼筋などの機能力や萌出力が三次元的に作用していて、歯列全体をきちんと保持するためにはこれらの力の均衡がとれている必要があり、これを咬合保全力といいます。
■まとめ
多くの後戻りの原因は治療後の保定装置を装着していなかったことが原因です。しかし、再治療となってしまうと、期間、費用がまた掛かってしまいます。
なぜ矯正医のもとで矯正治療したのに問題が生じてしまうのか。といった疑問がよぎる方もいると思います。それは担当医が機能性を考慮せず治療をしている、機能性に関しての知識が少ないからというのも原因にあります。
当院の行っている矯正歯科治療は後戻りしにくいことが1つの特徴です。
それは咬み合わせをしっかり意識した治療を行っているからです。人間の身体は回復機能を備えていますので、戻ろうとする力、一部に過度な力がかかると後戻りを促進させる現象が起きるのです。
後戻りが生じる要因は様々ありますが、歯並びが悪くなる原因が残っているか検査診断まで無料で実施しています。
治療に入るまでは費用は一切頂いておりません。プロの目線で客観的に診断させていただき、事実をお伝えしています。患者様にはたくさん悩んでくださいとお伝えしています。
以前のように何年もかかるものではありません。皆さんが想像されているよりも簡易的に対応できますので、まずはご相談ください。

犬歯誘導
2021年11月19日
顎関節は、回転運動と滑走運動が可能な関節です。
特に重要なのは関節から離れ、歯根が最も丈夫な犬歯です。
犬歯は正面から見て3番目の歯を指します。
上下合わせて4本ありますが一般的に八重歯とお伝えするとわかりやすいと思います。
■犬歯は丈夫な歯
犬歯は骨に埋まっている歯根の部分が他の歯に比べて長く、横からの力に強いです。
顎を左右に動かした際、下顎の制御に力を発揮します。
犬歯が横から受ける力を負担することで、臼歯部を側方圧から守ってくれます。
過度な筋肉の緊張が起こらないように、一定以上の力が犬歯にかかると脳にこれ以上食いしばるなと信号を犬歯の歯根膜から脳に送ります。
咀嚼の際にあまり使わない犬歯ですが、とても重要な働きをしています。
ここで問題なのが不正咬合で犬歯が咬合していない場合です。
上下の歯を噛み合わせてみてください。
力を抜いて下の顎を左右どちらか一方にゆっくり動かしてみてください。
犬歯に当たって奥歯に隙間ができますでしょうか?この状態を犬歯誘導といいます。
歯はもともと横の動きに強くないです。
そこで丈夫な犬歯を支えに、横の動きは犬歯に噛み合うようになっています。
このように考えると見た目の審美性だけではなく、機能的な正しい噛み合わせの位置にない場合は、見た目も大切ですがむしろ噛み合わせが心配です。
先ほどの噛み合わせた時に奥歯に隙間ができない場合は、どこかに無理な力がかかり、負担がかかっている可能性があります。
歯ががたがたしていることを叢生(そうせい)と言います。
歯軸と顎骨の大きさとの不調和(ディスクレパンシー)がマイナスの関係になったときにあらわれる症状です。
あとから犬歯が生えてくるために上下前歯部に叢生を生じることが多いです。
歯が重なり合っている箇所を正確に歯磨きできず、虫歯などになりやすい傾向があります。
歯を並べるスペースを確保し、マルチブラケットやインビザラインなどで歯を移動させて治療を行います。歯の大切さを誰よりも分かっているため、出来る限り非抜歯で対応しておりますが、全ての症例で非抜歯を行っているわけではありません。犬歯自体は抜歯せず、他の歯を抜くなどして矯正治療をすることが多いです。
その場合は、カウンセリングで患者様1人1人へしっかりとお伝えさせていただきます。
捻転を含む叢生という症状は比較的容易に後戻りします。
そのため矯正治療後は長期にわたる保定が必要です。

■理論的理想咬合
咬合理論には複数のものが存在しています。
ちなみに、犬歯誘導による臼歯部の離開咬合が1番理想的だとされています。
先ほどもお伝えした、噛んだまま顎を横にずらしてみた時、上と下の犬歯に誘導される形で、奥歯が開いてひっかからないことを指します。
そして、物を噛むときに、まっすぐ噛むだけではありません。
上下のみならず、左右にも顎が動いている点も知っておきたいです。。
どちらかというと雨だれ型のように咀嚼します。
本来とはずれてしまった場所で長期間かんでいると、奥歯はどんどん倒されることになるでしょう。奥歯は縦にかかるパワーには耐えられるのですが、意外と横からの力には弱いとされています。
ですから、横にずれてしまった場所から真ん中に噛んでいって、最後に真ん中に来た際だけ奥歯で噛むことが可能であれば奥歯への無理な負担を心配する必要はありません。
不正咬合であれば、特定の歯に力が入りすぎてしまい、該当する歯が割れる、揺れが起こる、ということで結果的に歯を抜くことにもなりかねません。
斜めに閉じる角度は、犬歯の角度によって異なります。
犬歯の角度のみによって、全奥歯が引っかかってしまうか…決定するのです。
八重歯は角度を定める犬歯が上方向に飛び出ていて、まったく当たることがなく、噛むべき角度が決まりません。奥歯が引っかかった角度しか、物理的な角度に関するファクターがありません。
分かりやすく言いますとお、犬歯がとても重要な奥歯をしっかりと守ってくれているのですね。
詳細は、生理的な噛み合わせが徹底した状況においては、噛んだ時に犬歯は当たりません。同一角度で犬歯が接してしまうスレスレの部分で咀嚼する軌道が決定しています。これをチューイング・サイクルと呼びます。
ゴルフおす時のスイングみたいに、パターンが記憶されますと、犬歯も奥歯も引っ掛かることなく、無意識のうちにスムーズに噛むことが可能です。ですから、歯はあまり磨り減りすることはありませんし、詳しく説明すると、咀嚼する段階次第で、このサイクルは変化します
。
不正咬合と噛み合わせが悪い際は、噛む角度の情報が犬歯のみならず、引っかかっている奥歯などから脳に伝達されます。脳から筋肉に情報が伝達されるためどうしても混乱してしまい弊害が発生します。
パターンが確立されていないと、相当な負担を歯にかけることになりますから、矯正治療により適切な角度を設定します。
徐々に最適な角度を脳が覚え、チューイング・パターンが確立し、徐々に生理的な噛み合わせが完成形に近づきます。
犬歯による臼歯離開咬合が、理想的な咬合といえるはずです。
あくまでも基準であり、実際は様々な要素により判断いたします。
不正咬合の場合、歯ぎしり、食いしばり、臼歯の歯周病、顎関節症、知覚過敏などさまざまな増悪因子となります。
■アンテリアガイダンスの重要性
今は噛めている、見た目も綺麗、と思っていても長期的に口腔内の健康を維持するなら、アンテリアガイダンスが大切です。
下の顎をさきほど左右どちらかに動かした時犬歯がわずかに擦れましたよね?
奥歯に隙間があることが本来必要で、隙間がなく、奥歯と奥歯が接していると臼歯部に負担があらわれ、臼歯や臼歯部の歯周組織が痛む原因となります。
具体的に言うと、下の顎を前に移動させるとき、上顎前歯の裏側と下顎前歯の切端の接触を前歯が誘導します。そして、側方向に移動させるときは犬歯が下の歯に接して誘導し臼歯部の隙間が得られることをアンテリアガイダンスが適切に確保されている状態だといいます。
■まとめ
歯並びが綺麗で美しいだけでは歯が正しく機能しているとは言えません。
適切な噛み合わせもとても大切です。
正常な噛み合わせ(咬合)に近づける治療が矯正治療です。
嚙み合わせが改善されなかった場合、噛む力をすべての歯で受け止めていないといけません。つまり一部の歯に過度な力が加わっていきます。
噛み合わせを意識した医院で治療を受けることを強くお勧めします。
矯正治療していきたいけど犬歯は前歯で目立つところで、矯正装置を付けた姿を人に見られたくないというジレンマに悩んでいる方はいませんか?
矯正治療は金属のギラギラした装置をつけるだけではありません。
当院では3つの目立たない矯正装置をご用意しております。
・透明なマウスピース型矯正装置
・見えない歯の裏側につける装置
・歯の表面に目立たない半透明の装置
従来の矯正装置と異なり、目立たない装置が多く開発されています。
接客業など、人前に出る職業の方も矯正治療を受けられています。
ぜひ一度、ご相談くださいね。

矯正治療の目的
2021年11月12日
矯正治療はなぜ必要だと思いますか?矯正治療ではどのような歯並びを目指すのか、ご存じでしょうか?
歯並びをきれいにして思いっきり笑いたいと考える方は多いと思います。
しかし、矯正歯科=歯並びを良くすることだけではありません。
口元を美しくするのと同時に、上下の歯のかみ合わせを良くすることで、身体的にも精神的にも健康な生活ができることを目的としています。
■矯正治療の目的
かみ合わせを良くするということは、上下の歯がしっかりとかみ合い良好に機能する位置に、歯を配列するということです。そうすることで、歯やお口周りの筋肉、顎の関節が機能的に働き、それぞれに過剰な負担がかかることもなくなります。
歯が不揃いだったり、上下の顎の歯並びがお互いにかみ合わなかったりする状態を不正咬合といいます。
不正咬合は、先天的なものと後天的なものによって分けられます。
○先天的(生まれつき)なもの
口唇・口蓋裂・ダウン症などの先天異常や、歯の数の過不足、歯の形態などがあります。
○後天的(生まれてからの障害、環境、生活習慣)なもの
口呼吸、全身的な病気、歯ぎしり、睡眠時の体の向きや噛む回数の低下などがあります。最近は食生活の激変によって、お口周りの筋肉の力が極端に弱い人が増えていることも関係していると思います。
食べ物が噛みにくいと感じる、見た目のコンプレックがあるなど、不正咬合から引き起こされる悩みは患者様によって異なります。患者様それぞれの悩みをしっかり把握し、できる限りの治療を行うことで、少しでも快適な日常を送れるようにすることも目的のひとつと考えております。
■矯正治療が必要な不正咬合
不正咬合をそのままにしていると、食べ物がよく噛めない、顎の関節に負担がかかるといった問題が出てきます。
矯正治療が必要と言われている状態はいくつかあります。
○出っ歯(上顎前突)
出っ歯は上顎前突(じょうがくぜんとつ)と言い、みなさまがよく知っている歯並びだと思います。前歯で食べ物が噛みにくい、唇を閉じることが難しい、上顎の前歯が下顎の歯よりも大きく前に出ている歯並びです。
前歯で食べ物が噛みにくいため、本来前歯で行うことを奥歯がしなければならず、奥歯の使用が多くなります。奥歯喪失のリスクが高くなる場合があり、奥歯を失った際には咬合崩壊といって、本来咬むべき顎の位置がわからなくなってしまうこともあります。
○受け口(反対咬合)
受け口は見た目で言うと、下顎が上顎よりも前に出ている歯並びで、かみ合わせが通常とは逆の向きになっている状態です。
○八重歯・乱ぐい歯(叢生)
歯が様々な角度で生えていて重なり合い、デコボコになってしまっている歯並びを乱ぐい歯や叢生(そうせい)と呼びます。そのうちのひとつの「八重歯」は、日本ではチャームポイントとして捉えられることもありますが、海外では早期に矯正されることが多くあります。ブラッシングがしにくく、むし歯や歯周炎になりやすい状態といえます。
○開咬
オープンバイトと呼ばれる開咬は、前歯に上下方向の隙間ができる不正咬合のことで、奥歯でしっかり噛んだ際にも上下の前歯がかみ合わない状態です。
基本的には開咬は前歯の不正咬合を指しますが、稀に奥歯でも同様の症状を起こすことがあります。
○過蓋咬合
一般的にオーバーバイトが4mm以上の場合を過蓋咬合と言い、前歯の上下方向のかみ合わせが深い状態のことです。
過蓋咬合になると、下顎の前歯が上顎の前歯に隠されて見えなくなります。見た目だけでなく、大きく被さることにより、下顎の前歯が上顎の前歯の裏側の歯ぐきに食い込み、口内炎を引き起こしたり発音が悪くなったりすることもあります。
きれいな歯並びでも、上下の歯がきちんとかみ合っているとは限りません。
すべての歯がきちんとかみ合い、顎の動きによく合って食べ物を噛めることが大切です。
■矯正治療のメリット
矯正治療をすると歯並びがきれいになり、思いっきり笑えることで自信を持てると思います。
また、歯並びが大きく崩れている状態や、受け口等の方が治療を行うと、フェイスラインも同時にシャープになる傾向があります。
そのほかにも、矯正治療には身体的なメリットがいくつもあります。
○咀嚼機能の改善と維持
咀嚼能率が向上することで、胃腸の負担が軽減されます。
○顎関節と咬合との調和
上下の歯並びは正しくない位置でかみ合うと当たるべきでない部分が強く当たります。正しい位置でかみ合う場合は歯列全体でその圧力を分散しますが、歯並びが悪い部分はその力が偏って大きくかかってしまいます。どこか特定の歯に力が強く加わると、歯がかみ合わせの力に耐えかねて割れたり、歯の周囲の骨がダメージを受けたりします。矯正治療を受けることで、かみ合う力が歯列全体で受けられるようになり、歯の寿命も長くなります。
また、人間の顔貌は骨格で決まるため、顎の形や歯並びが悪いと顔貌の歪みの原因にもなります。
○発音の改善
矯正治療で歯並びがきれいに整えられると、歯並びの隙間がなくなり、舌の位置が安定します。そのため、空気の漏れがなくなったり滑舌が良くなったりすることで、発音が改善されることもあります。

■矯正治療のリスク
矯正治療の中で、完全にリスクを無くすことはできません。
当院ではメリットだけでなく、リスクについてもきちんと理解・納得していただいた上で、治療に取り掛かります。
矯正治療には、
○歯の痛み
○発音障害
○歯根吸収
○歯肉退縮
○後戻り
などのリスクがあることが知られています。
当院ではライトフォース理論に則り弱い力を加えて治療を進めることで、様々なリスクを抑えております。特に痛みについては、従来と比較して1/2~1/5になります。
弱い力では痛みが軽くなるのはもちろんですが、毛細血管がつぶれないため血液の流れが邪魔されず、本来の骨代謝が促され、歯が動くスピードも速くなります。
また、歯を動かすことで矯正治療中に歯根が短くなることや歯の神経が失活することがありますが、弱い力では歯への負担が小さくなり、リスクを軽減できます。
しかし、稀に矯正治療中の一時的なかみ合わせの状態によって、これらのリスクが起こることもあります。当院では、事前の検査やカウンセリングで、プロ目線で客観的に診断し事実をお伝えしています。
■まとめ
健康で美しい外見を求めることは、とても素晴らしいことです。
たくさん悩んでいただき、ご自身がこの医院、この先生に診てもらいたいと思ったときが、治療に最適なタイミングだと思います。
ただし、矯正治療を始めていく上で、事前にリスクについて説明がない場合は注意が必要です。
当院では、納得して頂くまで詳しくご説明させていただきます。お気軽にご相談下さいね。
