三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科を運営する医療法人D.D.Orthoが監修しています。

監修者
内澤 朋哉
経歴
| 2009年 | 北海道医療大学歯学部卒業 |
|---|---|
| 2009年 | 北海道医療大学院歯学研究科 |
| 2014年 | 北海道医療大学歯学部歯科矯正学講座 |
| 2015年 | こうざき歯列矯正歯科クリニック勤務 |
| 2017年 | 三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科開院 |
出っ歯の抜歯矯正|上顎2本の抜歯とハーフリンガルで改善した30歳女性の症例
「出っ歯を改善したい」と来院された20歳女性に、上顎左右の第一小臼歯2本を抜歯して矯正治療を行った症例をご紹介します。
治療前は上の前歯が前方に突出し、下の前歯を深く覆う「過蓋咬合」も認められました。また、左右の奥歯には、ほぼ歯1本分の前後関係のずれがありました。
出っ歯の抜歯矯正では、歯並びや前歯の傾斜、上下の咬み合わせなどを確認して、抜歯の必要性と部位を検討します。本症例では、下顎の小臼歯は抜歯せず、上顎にできた抜歯スペースを利用して上の前歯の位置を調整しました。
装置は、上の歯に裏側の装置、下の歯に表側の装置を付けるハーフリンガル矯正を選択しました。歯科矯正用アンカースクリューとダイレクトトラックによる咬合挙上を併用し、治療期間は38か月でした。

症例の概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・性別 | 30歳・女性(初診時) |
| 主訴 | 出っ歯を改善したい |
| 治療前の状態 | 出っ歯、過蓋咬合、左右AngleⅡ級 |
| 骨格の所見 | 骨格性Ⅱ級、ブラキータイプ |
| 使用装置 | ハーフリンガル、歯科矯正用アンカースクリュー、ダイレクトトラック |
| 抜歯部位 | 上顎左右第一小臼歯(左右4番) |
| 治療期間 | 38か月(3年2か月) |
| 治療費 |
|
処置料は基本治療費とは別に、通院ごとにかかります。処置料の合計は、通院回数によって異なります。
治療前:前歯の突出と深い咬み合わせ
上の前歯が下の前歯より大きく前方に位置し、前歯の上下の重なりも深い状態でした。
治療前のセファロ分析では、オーバージェットは10.69mm、オーバーバイトは7.95mmでした。オーバージェットは前歯の前後方向の差、オーバーバイトは上下の前歯が縦に重なる量を表します。
奥歯の前後関係は左右ともにAngleⅡ級で、ほぼ歯1本分のずれを認めました。

セファロ分析:骨格と前歯の傾斜を確認
側面のレントゲン写真を用いたセファロ分析では、上顎骨が前方に位置し、下顎骨もやや前方に位置していました。上下顎の相対的な前後関係から、骨格性Ⅱ級と診断しました。
また、下顎下縁平面の傾斜が小さいブラキータイプの骨格でした。
上顎前歯は唇側、つまり唇の方向に傾いていました。一方、下顎前歯の傾斜は標準的と評価しました。
| 主な分析項目 | 治療前の値 |
|---|---|
| SNA | 90.58° |
| SNB | 86.25° |
| ANB | 4.34° |
| SN-MP | 12.45° |
| U1-SN | 123.95° |
| FMIA | 60.01° |
| オーバージェット | 10.69mm |
| オーバーバイト | 7.95mm |
AngleⅡ級は歯の咬み合わせの前後関係を表し、骨格性Ⅱ級は顎の骨の前後関係を表します。本症例では、それぞれを分けて確認しました。

パノラマレントゲンの所見
治療前のパノラマレントゲンでは、歯牙欠損はなく、上下左右に親知らずを認めました。歯根の長さは標準的でした。

出っ歯の抜歯矯正で、上顎の2本だけを抜歯した理由
本症例では、左右ともに奥歯の咬み合わせがAngleⅡ級で、ほぼ歯1本分の前後関係のずれが認められました。また、上顎前歯は前方に突出し、唇側に傾いていました。
一方、下顎前歯の傾斜は標準的と評価しました。これらの所見を踏まえ、下顎の小臼歯は抜歯せず、上顎左右の第一小臼歯2本を抜歯する計画としました。
上顎の抜歯スペースを利用して上の前歯を後方へ移動し、前歯の突出と上下の歯の前後関係を改善することを目指しました。
「上顎のみ抜歯」は、上の歯だけを矯正するという意味ではありません。本症例では上下の歯に装置を付け、歯並びと咬み合わせを調整しています。
出っ歯の矯正で抜歯が必要かどうか、何本抜歯するかは、歯並び・前歯の位置・骨格・咬み合わせなどによって異なります。本症例のような上顎2本の抜歯が、すべての方に適しているわけではありません。
抜歯矯正の目的や、抜歯・非抜歯を判断する際のポイントについては、「抜歯矯正についての解説記事」もご覧ください。
出っ歯の抜歯矯正の流れ|ハーフリンガルを使用
1.上顎の抜歯と装置の装着
上顎左右第一小臼歯を抜歯し、ハーフリンガル矯正で治療を進めました。上顎には裏側の装置、下顎には表側の装置を使用しています。
ハーフリンガル矯正の特徴や費用、メリット・デメリットについては、「ハーフリンガル矯正とは?費用・メリット・デメリット・裏側矯正との違い」で詳しくご紹介しています。

2.ダイレクトトラックで咬み合わせを挙げる
本症例では前歯の咬み合わせが深かったため、ダイレクトトラックを用いて咬合挙上を行いました。これは、歯に材料を付けて、一時的に咬み合わせの高さを調整する処置です。
咬み合わせを挙げて前歯の装置を装着するためのスペースを確保し、前歯にもブラケットを装着して歯並びの調整を進めました。
その後、歯の移動と咬み合わせの調整を進め、前歯の深い重なりの改善を図りました。
3.アンカースクリューを併用して歯の位置を調整
治療には歯科矯正用アンカースクリューを併用しました。抜歯スペースを利用しながら上顎前歯の位置を調整し、上下の歯並びと咬み合わせを整えました。

4.咬み合わせの仕上げと装置の撤去
前歯の前後関係、上下の重なり、歯列全体の咬み合わせを調整し、38か月で装置を撤去して動的治療を終了しました。
治療後の変化
治療前後の口腔内写真を比較すると、上の前歯の突出が軽減し、前歯の深い重なりも改善した様子が確認できます。治療前は上の前歯に隠れていた下の前歯が、治療後には見えるようになっています。
上顎の抜歯スペースも閉鎖され、歯並びが整いました。

※掲載写真は本症例の経過です。治療方法・期間・結果には個人差があります。
治療期間・費用・主なリスク
- 治療期間:38か月(3年2か月)
- 基本治療費:1,150,000円(税込)
- 処置料:通院1回につき8,800円(税込)
- 主なリスク・副作用:歯の痛みや違和感、口内炎、虫歯、歯肉炎、歯根吸収、歯肉退縮、治療期間の延長、治療後の後戻りなど
出っ歯の矯正・抜歯についてのご相談
今回の症例では、上顎左右の第一小臼歯2本を抜歯し、ハーフリンガル矯正で出っ歯と深い咬み合わせの改善を図りました。下顎の小臼歯は抜歯せず、上下の歯並びと咬み合わせを調整しました。
「出っ歯を治すために抜歯が必要なのか」「上の歯だけの抜歯で治療できるのか」といった疑問は、検査結果をもとに個別に判断する必要があります。
三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科では、歯並び・咬み合わせ・レントゲン検査の所見を確認し、抜歯の必要性や装置の選択、治療期間・費用についてご説明します。出っ歯や深い咬み合わせが気になる方は、矯正相談でお聞かせください。




