三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科を運営する医療法人D.D.Orthoが監修しています。

監修者
内澤 朋哉
経歴
| 2009年 | 北海道医療大学歯学部卒業 |
|---|---|
| 2009年 | 北海道医療大学院歯学研究科 |
| 2014年 | 北海道医療大学歯学部歯科矯正学講座 |
| 2015年 | こうざき歯列矯正歯科クリニック勤務 |
| 2017年 | 三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科開院 |
下顎の八重歯と重度のでこぼこは治る?4本抜歯・表側ワイヤー矯正で改善した症例
「下の八重歯を治したい」「下の前歯のでこぼこが気になる」というお悩みで、矯正相談に来院される方は少なくありません。
今回ご紹介するのは、下顎の八重歯と前歯の重度なでこぼこを主訴に来院された20代男性の症例です。
初診時には、上顎に軽度の叢生、下顎に重度の叢生が認められ、特に下顎右側犬歯が歯列の外側に位置していました。上下左右の第一小臼歯を4本抜歯し、表側ワイヤー矯正で28か月間治療しました。
先に犬歯を後方へ移動して前歯を並べるスペースを確保し、その後、すべての歯にマルチブラケット装置を装着して、歯並びと噛み合わせを段階的に整えました。
この症例のポイント
- 20代男性
- 主訴は八重歯と下顎前歯の重度なでこぼこ
- 上顎には軽度、下顎には重度の叢生を認めた
- 上下左右の第一小臼歯を4本抜歯
- 表側ワイヤー矯正で治療
- 犬歯を先に後方移動してから前歯を配列
- 治療期間は28か月
- 治療費は94万円
- 治療後は八重歯と前歯のでこぼこが改善
症例概要
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 年齢・性別 | 20代・男性 |
| 主訴 | 八重歯と下顎前歯のでこぼこを改善したい |
| 主な診断 | 上顎の軽度叢生・下顎の重度叢生 |
| 骨格的特徴 | Skeletal Class I(骨格性Ⅰ級) |
| 臼歯関係 | 左右AngleⅠ級 |
| 犬歯関係 | 左右Ⅰ級 |
| 顔面型 | ドリコフェイシャルタイプ |
| 抜歯部位 | 上下左右の第一小臼歯4本 |
| 使用装置 | 表側マルチブラケット装置 |
| 治療期間 | 28か月 |
| 治療費 | 94万円 |
| 保定装置 | 固定式リテーナー |
| 主なリスク | 疼痛、歯根吸収、歯肉退縮、虫歯、歯周病、後戻りなど |
※治療結果や治療期間には個人差があります。
初診時の状態

初診時には、上顎に軽度の叢生、下顎に重度の叢生が認められました。
「叢生」とは、歯が並ぶためのスペースが不足し、歯が重なったり、本来の歯列から外れたりしている状態です。一般的には「歯のガタガタ」「前歯のでこぼこ」と表現されます。
上顎には軽度のでこぼこが認められました。一方、下顎ではスペース不足が大きく、犬歯が歯列の外側に位置する八重歯と、前歯の重なりが認められました。特に下顎右側犬歯の唇側転位が目立つ状態でした。
一方、奥歯の前後的な関係は左右ともAngleⅠ級で、犬歯関係もⅠ級でした。上下の顎の骨格的な前後関係には、大きなずれは認められませんでした。
歯磨きが難しい状態でした
初診時には歯の重なりが大きく、歯ブラシが届きにくい部分にプラークが残りやすい状態でした。
叢生が強い場合、歯と歯の間や歯肉との境目を清掃しにくくなります。そのため、矯正治療中は通常以上に丁寧な歯磨きと、定期的な口腔衛生管理が必要です。
補綴物と修復物の状態
初診時の口腔内には、以下の補綴物・修復物が確認されました。
- 右上4番、右上7番、左下6番:補綴処置済み
- 右上5番、左上4番、左上5番:インレーによる修復あり
詰め物や被せ物、根管治療を受けた歯があっても、歯や歯周組織の状態を確認したうえで矯正治療を行える場合があります。
ただし、修復物が入っている歯は装置が外れやすいことがあり、歯の状態によっては矯正治療前後に一般歯科での処置が必要になる場合もあります。
パノラマX線写真の所見
パノラマX線写真とは?
パノラマX線写真とは、上下の歯や顎の骨を1枚の画像で広範囲に撮影できるレントゲン検査です。矯正治療を始める前に行う基本的な検査の一つで、歯並びだけでは分からないお口の状態を詳しく確認することができます。
パノラマレントゲンでは、主に以下のような項目を確認します。
- 歯の本数や先天性欠損歯の有無
- 親知らずの位置や生え方
- 埋伏歯(骨や歯ぐきの中に埋まっている歯)の有無
- 歯根の長さや形態
- 虫歯や歯周病による骨の状態
- 顎の骨や歯の周囲に異常がないか
これらの情報をもとに、矯正治療を進められるかを確認するとともに、必要に応じて親知らずの抜歯時期や治療方法を検討します。
パノラマX線写真で確認された内容

パノラマX線写真では、右上7番、右上4番、左下6番に根管治療の既往が確認されました。
親知らずについては、以下の3本が認められました。
- 右上8番
- 右下8番
- 左下8番
左上8番は認められませんでした。
そのほかの歯の本数に大きな問題はなく、歯根の長さにも矯正治療を妨げる明らかな異常は認められませんでした。
セファロ分析
セファロ分析とは?
セファロ分析とは、頭部X線規格写真(セファログラム)を用いて、歯や顎の骨、顔全体のバランスを詳しく分析する検査です。矯正治療では欠かせない検査の一つであり、見た目だけでは分からない骨格や歯の位置関係を客観的に評価できます。
セファロ分析では、主に以下のような項目を確認します。
- 上顎と下顎の前後的な位置関係・顎の骨格のバランス(Skeletal Class I・II・III)
- 上下の前歯の傾きや突出の程度
- 顔全体のバランスや口元の突出感 など
これらの情報をもとに、「抜歯が必要か」「どの方向へ歯を動かすべきか」「口元をどの程度改善できるか」などを総合的に判断し、一人ひとりに適した治療計画を立案します。
当院では、セファロ分析の結果に加え、口腔内写真や顔貌写真、パノラマX線写真、歯型(口腔内スキャン)などもあわせて評価し、歯並びだけでなく咬み合わせや顔貌との調和まで考慮した矯正治療をご提案しています。
今回の症例でのセファロ分析では

側面頭部エックス線規格写真(セファログラム)を分析したところ、上下の顎の前後的な関係はSkeletal Class I、つまり骨格性Ⅰ級でした。
上下顎前歯には唇側傾斜が認められました。これは、前歯が骨に対して前方へ傾いている状態です。
また、顔面型はドリコフェイシャルタイプでした。ドリコフェイシャルタイプは、顔の垂直的な長さが比較的長い傾向を示します。
このような症例では、単に前歯を並べるだけでなく、前歯の傾斜や垂直的な噛み合わせにも配慮しながら治療を進める必要があります。
診断と治療方針
本症例では、以下の状態を総合的に確認しました。
- 上顎の軽度叢生
- 下顎の重度叢生
- 下顎右側犬歯の八重歯(唇側転位)
- 上下顎前歯の唇側傾斜
- 骨格的にはⅠ級
- 臼歯関係と犬歯関係はⅠ級
- ドリコフェイシャルタイプ
特に下顎のスペース不足が大きく、歯列の拡大や前歯のさらなる唇側傾斜だけで歯を並べることは適切ではないと判断しました。
そこで、上下左右の第一小臼歯を1本ずつ、合計4本抜歯し、表側ワイヤー矯正で治療する方針としました。
右上第一小臼歯は根管治療および補綴処置を受けていましたが、実際の抜歯部位は、ほかの歯や歯周組織の状態、叢生量、歯の移動計画などを総合して決定しています。
なぜ4本の抜歯が必要だったのでしょうか?
4本抜歯を選択した主な目的は、八重歯と重度の叢生を改善するためのスペースを確保することです。
本症例では上下の前歯がすでに唇側へ傾斜していました。そのため、歯列を広げたり、前歯をさらに前方へ移動したりして無理に並べると、前歯の傾斜が強くなる可能性がありました。
抜歯によって得られたスペースを利用することで、次の改善を目指しました。
- 八重歯を歯列内へ移動する
- 下顎前歯の重なりを改善する
- 前歯の唇側傾斜に配慮する
- 上下の歯列を整える
- 安定した噛み合わせをつくる
ただし、八重歯や叢生があれば必ず抜歯するわけではありません。必要なスペース、前歯の傾斜、顎の骨格、口元、歯肉や歯槽骨の状態などによって、適切な治療方法は異なります。
治療の流れ
Step 1:犬歯のリトラクション
最初に、上下の歯列をセクションに分けて部分的に装置を装着し、犬歯の後方移動を行いました。
犬歯のリトラクションとは、抜歯によって得られたスペースを利用し、犬歯を後方へ移動する処置です。
本症例では前歯部の叢生が強かったため、最初から前歯全体に装置を装着するのではなく、先に犬歯を移動して前歯を並べるためのスペースを確保しました。
Step 2:すべての歯に装置を付けてレベリング
前歯を並べるためのスペースを確保した後、すべての歯に表側のマルチブラケット装置を装着しました。
形状や太さの異なるワイヤーへ段階的に交換しながら、歯の高さ、傾き、ねじれを整えていきました。この工程を「レベリング」と呼びます。
重なっていた下顎前歯についても、歯や歯周組織への負担に配慮しながら、少しずつ歯列内へ移動しました。
Step 3:残っている抜歯スペースの閉鎖
上下の歯列がある程度整った後、残っている抜歯スペースを閉鎖しました。
スペースを閉じる際には、前歯と奥歯の位置関係を確認しながら歯を移動させます。単に隙間をなくすだけではなく、前歯の傾斜や奥歯の噛み合わせにも配慮することが重要です。
Step 4:ディテーリングと咬合の緊密化
治療の最終段階では、歯の細かな傾きや高さ、上下の歯の接触状態を調整しました。
この工程を「ディテーリング」といいます。
正面から見た歯並びだけでなく、左右の犬歯や奥歯が適切に噛み合うように調整し、咬合の緊密化を図りました。
上記の治療の流れを動画にまとめたのでご覧ください。
治療結果

28か月間の表側ワイヤー矯正によって、下顎の八重歯と前歯の重度なでこぼこが改善しました。上顎の軽度なでこぼこも整い、上下の歯列と噛み合わせが改善しました。
治療後には、次の変化が認められました。
- 八重歯が歯列内に配列された
- 下顎前歯の大きな重なりが改善した
- 上下の歯列が滑らかに整った
- 抜歯スペースが閉鎖した
- 前歯の噛み合わせが改善した
- 左右の犬歯と奥歯の咬合が整った
見た目を整えるだけでなく、上下の歯が機能的に接触するように、治療の最終段階で細かな調整を行っています。
治療後は保定装置を使用します
矯正装置を外した直後の歯は、元の位置に戻ろうとする「後戻り」が起こりやすい状態です。
そのため、治療後は上下の前歯の裏側に固定式リテーナーを装着しました。
保定期間中も、歯並びや噛み合わせ、リテーナーの状態を定期的に確認する必要があります。固定式リテーナーの周囲には汚れが残りやすいため、歯間ブラシやフロスなどを併用した清掃も重要です。
八重歯と重度の叢生は4本抜歯で治せますか?
八重歯や重度の叢生は、4本抜歯とワイヤー矯正によって改善できる場合があります。
ただし、すべての患者さんに4本抜歯が必要なわけではありません。また、同じように見える歯並びでも、必要な治療方法は異なります。
治療方針を決める際には、以下の項目を確認します。
- 歯を並べるために必要なスペース
- 上下の前歯の傾き
- 顎の骨格的なバランス
- 口元の突出感
- 歯槽骨と歯肉の状態
- 奥歯と犬歯の噛み合わせ
- 虫歯や根管治療を受けた歯の状態
- 親知らずの有無と位置
口腔内写真だけで抜歯・非抜歯を決めることはできません。パノラマエックス線写真やセファログラムなどを用いた精密検査が必要です。
よくあるご質問
八重歯は抜かずに治せますか?
軽度のスペース不足であれば、歯列の拡大、奥歯の後方移動、歯と歯の間をわずかに削るIPRなどによって、非抜歯で治療できる場合があります。
一方、スペース不足が大きい場合や、前歯がすでに前方へ傾いている場合は、小臼歯の抜歯を検討することがあります。
なぜ八重歯ではなく小臼歯を抜いたのですか?
犬歯は、噛み合わせを横方向の負担から守るうえで重要な役割を持っています。そのため一般的には、八重歯になっている犬歯を抜くのではなく、小臼歯の抜歯スペースを利用して犬歯を正しい位置へ移動します。
ただし、虫歯、歯根、歯周組織などの状態によっては、抜歯する歯の選択が異なる場合があります。
根管治療を受けた歯でも矯正治療はできますか?
根管治療を受けた歯でも、歯根や歯周組織に問題がなければ、矯正治療を行える場合があります。
ただし、根の先の病変や歯根破折などがないかを確認し、必要に応じて一般歯科と連携することが大切です。
重度の叢生では、なぜ最初から前歯に装置を付けないのですか?
前歯を並べるスペースが不足した状態で装置を付けると、前歯がさらに前方へ移動したり、歯や歯周組織に負担がかかったりする可能性があります。
今回の症例では、先に犬歯を後方へ移動し、前歯を並べるスペースを確保してから、すべての歯に装置を装着しました。
表側ワイヤー矯正の治療期間はどのくらいですか?
抜歯を伴う全顎矯正では、一般的に2~3年程度かかることがあります。本症例の動的治療期間は28か月でした。
叢生の程度、歯の動き、来院間隔、装置の破損、顎間ゴムの使用状況などによって治療期間は変わります。
4本抜歯をすると隙間は残りませんか?
抜歯によってできたスペースは、矯正治療中に歯を移動して閉鎖します。
本症例でも、レベリング後に残っているスペースを閉じ、最後に噛み合わせの細かな調整を行いました。
抜歯を伴う表側ワイヤー矯正の注意点
矯正治療には、次のようなリスクや副作用があります。
- 装置装着後の痛みや違和感
- 装置による頬や唇の粘膜の傷
- 歯磨き不足による虫歯や歯肉炎、歯周病
- 歯根吸収
- 歯肉退縮
- ブラックトライアングル
- 歯髄症状や歯髄壊死
- 顎関節症状
- 装置の脱離や破損
- 治療期間の延長
- 保定装置を適切に使用しない場合の後戻り
特に、歯の重なりが大きい方や補綴物が多い方では、矯正治療中の口腔衛生管理が重要です。
まとめ
今回ご紹介したのは、八重歯と下顎前歯の重度なでこぼこを、上下左右の第一小臼歯4本の抜歯と表側ワイヤー矯正で改善した20代男性の症例です。
治療期間は28か月、治療費は94万円でした。
重度の叢生が認められたため、最初に犬歯を後方へ移動して前歯を並べるスペースを確保しました。その後、すべての歯をレベリングし、残った抜歯スペースの閉鎖と噛み合わせの細かな調整を行いました。
八重歯や前歯のでこぼこがあっても、必ず4本抜歯になるわけではありません。抜歯・非抜歯の判断には、叢生量だけでなく、前歯の傾斜、骨格、口元、歯根、歯周組織、噛み合わせなどを含めた精密検査が必要です。
三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科では、患者さんごとの歯並びや骨格を確認し、治療方法をご提案しています。八重歯や前歯のでこぼこでお悩みの方は、矯正相談をご利用ください。
八重歯や重度のでこぼこでお悩みの方へ
「自分の歯並びも抜歯が必要なのか」「歯を抜かずに治療できる可能性はあるのか」と疑問をお持ちの方もいらっしゃると思います。抜歯の必要性は、でこぼこの程度だけではなく、顎の骨格、前歯の傾き、口元のバランス、歯槽骨の状態などを総合的に評価して判断します。
三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科では、セファロ分析やパノラマX線写真、口腔内写真などを用いて診査・診断し、それぞれの患者さんに適した治療方法をご提案しています。八重歯や前歯のでこぼこ、内側に入った歯でお悩みの方は、矯正相談をご利用ください。
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