犬歯誘導
2021年11月19日
顎関節は、回転運動と滑走運動が可能な関節です。
特に重要なのは関節から離れ、歯根が最も丈夫な犬歯です。
犬歯は正面から見て3番目の歯を指します。
上下合わせて4本ありますが一般的に八重歯とお伝えするとわかりやすいと思います。
■犬歯は丈夫な歯
犬歯は骨に埋まっている歯根の部分が他の歯に比べて長く、横からの力に強いです。
顎を左右に動かした際、下顎の制御に力を発揮します。
犬歯が横から受ける力を負担することで、臼歯部を側方圧から守ってくれます。
過度な筋肉の緊張が起こらないように、一定以上の力が犬歯にかかると脳にこれ以上食いしばるなと信号を犬歯の歯根膜から脳に送ります。
咀嚼の際にあまり使わない犬歯ですが、とても重要な働きをしています。
ここで問題なのが不正咬合で犬歯が咬合していない場合です。
上下の歯を噛み合わせてみてください。
力を抜いて下の顎を左右どちらか一方にゆっくり動かしてみてください。
犬歯に当たって奥歯に隙間ができますでしょうか?この状態を犬歯誘導といいます。
歯はもともと横の動きに強くないです。
そこで丈夫な犬歯を支えに、横の動きは犬歯に噛み合うようになっています。
このように考えると見た目の審美性だけではなく、機能的な正しい噛み合わせの位置にない場合は、見た目も大切ですがむしろ噛み合わせが心配です。
先ほどの噛み合わせた時に奥歯に隙間ができない場合は、どこかに無理な力がかかり、負担がかかっている可能性があります。
歯ががたがたしていることを叢生(そうせい)と言います。
歯軸と顎骨の大きさとの不調和(ディスクレパンシー)がマイナスの関係になったときにあらわれる症状です。
あとから犬歯が生えてくるために上下前歯部に叢生を生じることが多いです。
歯が重なり合っている箇所を正確に歯磨きできず、虫歯などになりやすい傾向があります。
歯を並べるスペースを確保し、マルチブラケットやインビザラインなどで歯を移動させて治療を行います。歯の大切さを誰よりも分かっているため、出来る限り非抜歯で対応しておりますが、全ての症例で非抜歯を行っているわけではありません。犬歯自体は抜歯せず、他の歯を抜くなどして矯正治療をすることが多いです。
その場合は、カウンセリングで患者様1人1人へしっかりとお伝えさせていただきます。
捻転を含む叢生という症状は比較的容易に後戻りします。
そのため矯正治療後は長期にわたる保定が必要です。
犬歯はとても重要な働きをする
■理論的理想咬合
咬合理論には複数のものが存在しています。
ちなみに、犬歯誘導による臼歯部の離開咬合が1番理想的だとされています。
先ほどもお伝えした、噛んだまま顎を横にずらしてみた時、上と下の犬歯に誘導される形で、奥歯が開いてひっかからないことを指します。
そして、物を噛むときに、まっすぐ噛むだけではありません。
上下のみならず、左右にも顎が動いている点も知っておきたいです。。
どちらかというと雨だれ型のように咀嚼します。
本来とはずれてしまった場所で長期間かんでいると、奥歯はどんどん倒されることになるでしょう。奥歯は縦にかかるパワーには耐えられるのですが、意外と横からの力には弱いとされています。
ですから、横にずれてしまった場所から真ん中に噛んでいって、最後に真ん中に来た際だけ奥歯で噛むことが可能であれば奥歯への無理な負担を心配する必要はありません。
不正咬合であれば、特定の歯に力が入りすぎてしまい、該当する歯が割れる、揺れが起こる、ということで結果的に歯を抜くことにもなりかねません。
斜めに閉じる角度は、犬歯の角度によって異なります。
犬歯の角度のみによって、全奥歯が引っかかってしまうか…決定するのです。
八重歯は角度を定める犬歯が上方向に飛び出ていて、まったく当たることがなく、噛むべき角度が決まりません。奥歯が引っかかった角度しか、物理的な角度に関するファクターがありません。
分かりやすく言いますとお、犬歯がとても重要な奥歯をしっかりと守ってくれているのですね。
詳細は、生理的な噛み合わせが徹底した状況においては、噛んだ時に犬歯は当たりません。同一角度で犬歯が接してしまうスレスレの部分で咀嚼する軌道が決定しています。これをチューイング・サイクルと呼びます。
ゴルフおす時のスイングみたいに、パターンが記憶されますと、犬歯も奥歯も引っ掛かることなく、無意識のうちにスムーズに噛むことが可能です。ですから、歯はあまり磨り減りすることはありませんし、詳しく説明すると、咀嚼する段階次第で、このサイクルは変化します
。
不正咬合と噛み合わせが悪い際は、噛む角度の情報が犬歯のみならず、引っかかっている奥歯などから脳に伝達されます。脳から筋肉に情報が伝達されるためどうしても混乱してしまい弊害が発生します。
パターンが確立されていないと、相当な負担を歯にかけることになりますから、矯正治療により適切な角度を設定します。
徐々に最適な角度を脳が覚え、チューイング・パターンが確立し、徐々に生理的な噛み合わせが完成形に近づきます。
犬歯による臼歯離開咬合が、理想的な咬合といえるはずです。
あくまでも基準であり、実際は様々な要素により判断いたします。
不正咬合の場合、歯ぎしり、食いしばり、臼歯の歯周病、顎関節症、知覚過敏などさまざまな増悪因子となります。
■アンテリアガイダンスの重要性
今は噛めている、見た目も綺麗、と思っていても長期的に口腔内の健康を維持するなら、アンテリアガイダンスが大切です。
下の顎をさきほど左右どちらかに動かした時犬歯がわずかに擦れましたよね?
奥歯に隙間があることが本来必要で、隙間がなく、奥歯と奥歯が接していると臼歯部に負担があらわれ、臼歯や臼歯部の歯周組織が痛む原因となります。
具体的に言うと、下の顎を前に移動させるとき、上顎前歯の裏側と下顎前歯の切端の接触を前歯が誘導します。そして、側方向に移動させるときは犬歯が下の歯に接して誘導し臼歯部の隙間が得られることをアンテリアガイダンスが適切に確保されている状態だといいます。
■まとめ
歯並びが綺麗で美しいだけでは歯が正しく機能しているとは言えません。
適切な噛み合わせもとても大切です。
正常な噛み合わせ(咬合)に近づける治療が矯正治療です。
嚙み合わせが改善されなかった場合、噛む力をすべての歯で受け止めていないといけません。つまり一部の歯に過度な力が加わっていきます。
噛み合わせを意識した医院で治療を受けることを強くお勧めします。
矯正治療していきたいけど犬歯は前歯で目立つところで、矯正装置を付けた姿を人に見られたくないというジレンマに悩んでいる方はいませんか?
矯正治療は金属のギラギラした装置をつけるだけではありません。
当院では3つの目立たない矯正装置をご用意しております。
・透明なマウスピース型矯正装置
・見えない歯の裏側につける装置
・歯の表面に目立たない半透明の装置
従来の矯正装置と異なり、目立たない装置が多く開発されています。
接客業など、人前に出る職業の方も矯正治療を受けられています。
ぜひ一度、ご相談くださいね。
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金属アレルギーの方も安心して受けられるマウスピース矯正
2021年10月29日
こんにちは
金属アレルギーというアレルギー症状についてお聞きになったことありますか?
金属アレルギーとは、ある特定の金属が原因で起こるアレルギー症状のことです。
したがって、アレルギー反応を示すような金属を使った歯科治療は受けられなくなります。
それは、矯正治療も例外ではないのですが、マウスピース矯正ならそうではありません。
今回は、金属アレルギーの方も安心して受けていただけるインビザライン・マウスピース矯正についてご紹介します。
■金属アレルギーとは
まずは、金属アレルギーについてご説明します。
金属アレルギーとは、先ほどお話しした通り、ある特定の金属が原因でおこるアレルギーのことです。
ひとことでアレルギーといっても、実はいろいろなタイプがあります。
その中で、金属アレルギーは、少々難しい言葉になりますが、Ⅳ型の接触アレルギーに分類されます。
Ⅳ型のアレルギーは遅延型アレルギーとも言われ、接触から24時間から72時間も経ってから症状が現れる性質をもっています。
○金属アレルギーは、金属自体に反応しているわけではない
金属アレルギーの特徴は、”金属”のアレルギーといいながらも、実はヒトの体は、金属そのものに対してアレルギー反応を起こさないという点にあります。
例えば、食物アレルギーにしても、花粉アレルギーにしても、蕎麦粉にアレルギーがあるなら、蕎麦粉そのものにアレルギーを起こしますし、スギ花粉にアレルギーならスギ花粉に対してアレルギー反応を示します。
しかし、金属アレルギーはそうではないのです。
金属アレルギーは、金属から溶け出した金属のイオンがタンパク質と結合して、アレルギー源に変化するのです。
この金属イオンとタンパク質が結合したものに対して、免疫細胞が反応することでアレルギー症状が起こります。
食物アレルギーも花粉アレルギーも、このようなややこしいプロセスを経ることなく、直接アレルギーの症状を引き起こしているわけで、金属アレルギーの発生プロセスは、全く異なるわけです。
○金属アレルギーの症状
金属アレルギーの症状としては、アレルギー症状を引き起こす金属と触れ合ったところに起こるただれや赤みなどの接触性皮膚炎や粘膜炎が代表的です。
例えば、歯科用の金属が金属アレルギーの原因となっている場合は、口内炎や舌炎を起こしたりしますし、掌蹠膿疱症という手足を中心とした皮膚の難治性の病気を引き起こしたりもします。
インビザラインは金属アレルギーの心配がない
■マウスピース矯正なら金属アレルギーも大丈夫
当院で人気が高まっているインビザラインをはじめとするマウスピース矯正は、ブラケットやワイヤーを使わず、マウスピースを矯正装置として利用しています。
インビザラインのマウスピースは、透明度が高く、厚みも0.5ミリというとても薄い素材で作られています。
インビザラインが目立ちにくいのはこのポリウレタン製のマウスピースのおかげです。
ポリウレタンって聞いたことないよという方もいらっしゃるかもしれません。
実はポリウレタンは、インナーなどの衣類やカバンなどから、住宅用の防音材や断熱材としても使われているとても身近なプラスチック素材です。
したがって、とても安全性の高い素材ですから、安心して使っていただけます。
このようにインビザラインのマウスピースはプラスチックで作られていますから、金属素材を全く使っていません。
もし、いずれかの歯科用金属に何らかのアレルギーがある方も、インビザラインなら安心して受けていただけます。
■ワイヤー矯正の場合は?
インビザラインなどのマウスピース矯正が開発される前は、ブラケットとワイヤーを使ったマルチブラケット法という矯正治療法が主流でした。
ブラケットとは、歯の表面につけられている金具で、多くの場合、金属製です。
セラミックブラケットというセラミック製の白くて目立ちにくいブラケットでさえ、完全に金属を排除しているわけではなく、ブラケットの一部にはコバルト合金などの金属が使われています。
固定源となる大臼歯という奥歯に装着するバンドも金属製です。
また、ワイヤーについては、形状記憶合金を使って作られており、やはり金属製です。
しかも、ブラケットとワイヤーでは、使われている合金の成分に違いがあります。
いろいろな種類の金属を使って矯正治療にあたることから、金属アレルギーの原因となる金属を含んでいる可能性が高くなっています。
そのため、もし、ブラケットやワイヤーの素材に含まれる金属成分に金属アレルギーがある場合、マルチブラケット法での矯正治療はとても難しいものになります。
■マウスピース矯正とワイヤー矯正を比べてみよう
金属アレルギーという視点から、マウスピース矯正とワイヤー矯正を比べてみますと、金属素材を使っていないマウスピース矯正の安全性の高さが理解できます。
確かに、マウスピース矯正といえども、マウスピース単体での矯正治療が難しい場合、アタッチメントや金属製のアンカースクリューを組み合わせることもあります。
アタッチメントとは歯の表面につける突起のようなもの、アンカースクリューは顎の骨に設置する細いネジのようなものです。
アタッチメントをつけるとインビザラインのマウスピースの密着度を高めるなどの効果が、アンカースクリューをつけると奥歯を後ろに移動させる効果などが得られ、矯正治療がより効率的に進められます。
アタッチメントにはいろいろなタイプがありますが、いずれもコンポジットレジンという歯科治療でよく使われるプラスチックで作られています。
また、アンカースクリューは金属ですが、金属アレルギーをほとんど起こさない生体親和性の高いチタニウム合金で作られています。
そのため、アタッチメントやアンカースクリューを使っても、一般的な矯正治療であるワイヤー矯正と比べて、インビザラインは金属アレルギーに対する安全性がとても高いことがわかっていただけると思います。
そのほかにも、例えばポリウレタン製のマウスピースがとても薄く、しかも透明度が高いことによる目立ちにくさや、食事や歯磨きのときは、ご自身の手で取り外しが可能であるなどの利点もあります。
こうした利点は、ワイヤー矯正では得られないものです。
通院回数という点で比べてみても、インビザラインは将来の交換用マウスピースを前もってお渡ししておくことができますから、ワイヤー矯正と比べて通院回数を減らすことも可能です。
最近、インビザラインによるマウスピース矯正の人気が高まっているのも、うなずけますね。
■ワンランク上の矯正治療
ワイヤー矯正と比べて、マウスピース矯正は担当医の技術力はそれほど問いません。
それは簡単なケースに限定されます。
難しいケースとして他院での治療のリカバリー、他院で断られた歯並び全体の矯正があります。
当院はインビザライン「ダイヤモンド」認定医院の認定を受けており、担当医が矯正治療に関しての知識や経験が豊富なため対応できるわけです。
より精度の高い治療計画を微調整も加えて対応しております。
■当院からのお願い
今回は、矯正治療と金属アレルギーについてお話ししました。
インビザラインをご希望の方については、金属アレルギーがあってもインビザラインを使った矯正治療なら、ほとんど影響を受けません。
したがって、金属アレルギーがあっても、ほとんどの方に受けていただくことが可能です。
ですが、受診される方にアレルギーがあるかどうかは、私たち歯科医師にとってはとても重要な情報です。
目標と診断
2021年10月22日
こんにちは
矯正治療に限らず、医療行為には治療と目標というものがあります。
目標がなければ、治療が成功したかどうか決められませんし、何よりどのように治療を進めていくのか、どのような状態になれば治療が終了となるのかも決められなくなってしまいます。
歯科医の担当分野でいえば、虫歯治療なら『痛みをなくすこと』、歯周病の治療なら『腫れや揺れをなくすこと』といったところでしょうか。
もちろん、被せ物をセットして虫歯で失われた歯の形を回復するというのも目標でしょう。
では、矯正治療の目標は一体なんでしょうか。
『歯並びをきれいに整えること』、これはすぐに思いつくと思いますが、実はこれだけではありません。
■矯正治療での治療目標
矯正治療に先立って、いろいろな検査や診査を受けていただき、その結果を分析します。
問題となる異常箇所が、歯並びだけなのか、顎の骨も含めたものなのか、両者の関係性も含めて見出し、どの部位を治療すべきか判断します。
この診療行為を治療目標の確立とよんでいます。
治療目標となる異常としては、『歯並びや噛み合わせの異常』『上顎骨や下顎骨の骨格の異常』『横顔の異常』『お口に関係するいろいろな組織の異常』の4つが挙げられ、それぞれの改善が目標となります。
矯正治療というと歯並びをきれいに整える治療というイメージがありますが、実は、単に歯並びを良くするだけにとどまらず、お口全体の組織を良くしようというコンセプトで行われていることがわかっていただけたのではないでしょうか。
だからこそ、矯正治療は誰でもできる治療ではないのです。
普通の歯科医院でも矯正治療を手がけているところは数多くありますが、当院のように矯正歯科治療を専門に行っているところの方が、おすすめとされる背景にはこのように矯正治療の治療目標がとても複雑であるという事情があります。
■矯正歯科治療での診断はちょっと特殊
矯正歯科治療においては、『病気や病状を判断』して『病名を決定する』だけでは十分とはいえません。
矯正歯科を受診する方の病名は、『不正咬合』『歯列不正』ですが、これだけで治療方針は決定できないからです。
そのため、矯正歯科治療の診断では、単に病気や病状を判断するにとどまらず、治療方針の決定に関係する範囲まで広く判断することが求められています。
また、患者さんのお口やお顔の形に加え、『食べ物を噛む』『言葉を発する』などのお口の機能の異常について、どこまでを正常とするのか、言い方を変えると、どの程度を病気として捉えるのかも問題となります。
しかも困ったことに、現代では、矯正歯科治療に対するニーズは年々多様化の一途をたどっています。
単に歯並びをきれいに整え、噛み合わせを適切にするだけではダメで、お顔を整える、さらには横顔もきれいにしたいというご希望を叶えられるようにしなければならなくなっています。
加えて、矯正治療の方法も、目立ちにくい方法や治療期間を短くする方法が望まれるようになってきました。
当院でも人気の高いインビザラインなどのマウスピース矯正が誕生したのは、こうしたニーズがあったからです。
そのため、治療前に行う診断の持つポテンシャルは、大きくなる一方です。
このような特殊性をはらんでいるのが、矯正歯科での診断なのです。
現在では、矯正治療前のさまざまな検査や診査を経て診断をくだし、それに基づいて治療前の状態を分類して評価するようにしています。
矯正歯科治療の診断には幅広い判断が求められる
■不正咬合の分類
歯並びが整っていない状態を、不正咬合、もしくは歯列不正といいます。
いろいろな治療前の検査や診査を経て、最初に歯並びの状態を診断します。
不正咬合の分類法としては、現在、一般的にはアングルの分類という分類法が用いられています。
○アングルの分類
アングルとは、角度という意味ではありません。
この分類方法を考案したアメリカ人歯科医師の名前エドワード・アングル博士に由来しています。
アングル博士は、今では近代的な矯正治療の父とも言われているほど矯正歯科治療の歴史に大きな貢献を果たした人物です。
このアングル博士が、100年以上前に考案した不正咬合の分類が、アングルの分類です。
アングルの分類では、上顎と下顎の歯並びの前後的な関係性を重視しています。
その上、アングルの分類を評価するときには、特別な計測器具はいりません。
歯型をとって作った石膏模型があれば十分です。
しかも、評価の方法もとても簡単で、矯正歯科治療のベテランでなくてもできる優れた方法です。
そのため、実際の矯正治療の現場でもとても重宝しています。
○アングルの分類の実際
アングルの分類は、上顎と下顎の第一大臼歯、いわゆる6歳臼歯の前後的な位置関係を基準にして、1〜3級に分類して判断します。
1級は、上顎と下顎の第一大臼歯の噛み合わせが正常な歯並びです。
2級は、下顎の第一大臼歯が上顎の第一大臼歯に対して後ろに下がっている噛み合わせです。
上顎前突(出っ歯)がこれにあたります。
ここから2級はさらに1類と2類に分類され、1類は上顎の前歯が前方に傾いている歯並び、2類は上顎の前歯が後ろに傾いている歯並びになります。
3級は、下顎の第一大臼歯が上顎の第一大臼歯前に対して前側で噛み合っていることで、下顎前突や受け口として知られている噛み合わせになります。
○アングルの分類の問題点
とても優れて、100年以上にわたって矯正治療の診断の基礎となっているアングルの分類ですが、問題がないわけではありません。
それは、アングルの分類の基準ともなっている第一大臼歯にあります。
実は、第一大臼歯が本来の位置になければ、この分類法は正しく評価しにくくなるのです。
そのため、第一大臼歯が本来の位置にあるのかをまず評価しなくてはなりません。
特に、第一大臼歯より前に生えているいずれかの歯に大きな虫歯がある場合や、歯がなくなっているような場合は、本来の位置からずれている可能性が高いため、要注意とされます。
左右の第一大臼歯の位置が前後的にずれているときや、必要以上に前に向かって傾いているときもずれが疑われます。
もし、第一大臼歯の位置がおかしいと思われる場合は、上顎と下顎の犬歯や小臼歯(第一大臼歯の前の歯)の位置関係も考慮に入れて判断します。
■顎骨の異常の改善
顎骨の異常には、①上顎骨の形や位置の異常、②下顎骨の形や位置の異常、③上顎骨と下顎骨の垂直的な位置関係の異常の3つがあり、それぞれの改善が治療目標となります。
○上顎骨の形や位置の異常
上顎骨の形の異常の例としては、骨格性の上顎前突症が挙げられます。
これは、上顎の前歯が傾くなどして、下顎の前歯より前に出ているような上顎前突ではなく、上顎骨自体が前方に成長しすぎたことで生じる上顎前突症です。
このような症例では、上顎と下顎の歯並びだけを整えても異常は解決できないので、骨格そのものも治療の対象となります。
○下顎骨の形や位置の異常
下顎骨の形の異常は、骨格性の下顎前突症が代表的です。
下顎骨自体が上顎骨よりも過度に前に向かって大きくなりすぎている不正咬合です。
上顎骨のそれと同じく、歯並びだけをよくしようとしても問題は解決しないので、骨格自体の治療も必要です。
○上顎骨と下顎骨の垂直的な位置関係の異常
上顎骨や下顎骨の骨格異常というと、先にご紹介した前方へ位置異常がイメージしやすいことでしょう。
ところが、顎の骨格は3次元のものですから、上下方向への位置異常もあります。
具体的には、開咬でよくみられる下顎骨の前上方へ過度な成長発育です。
やはり、上顎骨と下顎骨の治療も平行して行う必要があります。
■横顔の異常
横顔は、上唇と下唇の位置関係を基準にして異常があるかどうかを判断します。
具体的には、鼻の先端と下顎の先を結ぶラインを引いて、このラインに対して、上唇と下唇がどのような位置にあるのかを判断します。
なお、このラインをE-ラインとよんでいます。
E -ラインと上唇、下唇の関係性については、時代とともに変化しています。
長期間の矯正治療も治療の目標が決まっているとわかりやすいですよね。
ぜひ三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科へご相談ください。
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部分矯正について
2021年10月15日
こんにちは!
世田谷区の三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科です。
矯正というと、歯の全体にワイヤーをつけているというイメージをお持ちの方が多くいら
っしゃると思います。
しかし歯並びについてのお悩みは、大なり小なり、様々ですよね…
中でも気になる歯の部分だけにピンポイントでアプローチする部分矯正をご存知でしょう
か?
「前歯が少し出ているのが気になる」
「他の歯並びは綺麗なのに、ここの一本だけが引っ込んでいるせいで歯並びが良く見えな
い」
「前歯のすきっ歯だけが気になって仕方がない…」
など…
最近で多いのは、「リモートワークになったからあまり人と合わないので今こそ部分矯正を
やってみたい」「コロナ禍のマスク生活が日常化しているので矯正しても良いかな」などと、
今までも矯正に興味はあったものの、人とたくさん会うから今はちょっと…とためらって
いた方も、現在流行している新型コロナウィルスの影響でリモートワークが定着し、人と会
う機会が減っている今こそ矯正への意識も向上しているようです。
特に人から見られる前歯はとても大事で、前歯の歯並びが悪い、もしくは一本だけ引っ込ん
でいる、というのはなんと言ってもお顔の第一印象がかなり変わってきます。
近年では、審美歯科の注目度もかなり上がってきております。
このような理由から、お顔の印象を変えたいと前歯だけでも「早く・安く・目立ちにくく・
きれいに」できる部分矯正にニーズが高まっているのです。
さて、一般的な部分矯正とはどのような治療なのでしょうか。
部分矯正はプチ矯正、小矯正とも呼ばれていて、適応症例が限定されるということもありま
す。つまり、すべての症例では適応できないということですが、適応症例であれば、すべて
の歯を矯正するよりも「低価格」「短期間」で治療が可能になります。
■部分矯正の種類について
○ワイヤーによる部分矯正(表側・裏側)
ワイヤーによる部分矯正とは、歯にブラケットと呼ばれる矯正のための装置を歯の表面に
取り付けた後に、そこにワイヤーを通し、歯を適切な方向に動かしていく方法です。症例に
よって、もしくは患者様のご希望によっては歯の裏側にワイヤーをつける「裏側部分矯正」
というやり方もあります。
このワイヤーによる方法が矯正で一番ポピュラーなもので、昔からある矯正治療の方法に
なります。
ワイヤーによる矯正治療が終了すると、ワイヤーの代わりにリテーナーという保定装置を
装着します。この装置を付けることで、矯正した歯が元の位置に戻る(後戻り)のを防ぎま
す。
○適応可能なマウスピースによる矯正
適応可能なマウスピースによる矯正というのは、こちらも適応症例が限定されるというこ
ともありますが、透明なマウスピース型の矯正によるものです。こちらはブラケットやワイ
ヤーを使用することなく透明なマウスピースを装着しながら歯を適正な方向に動かしてい
く方法で、成人の方や金属アレルギーのある方、スポーツをしている方、などに適した矯正
の方法です。
■部分矯正のメリットについて
- 低価格で治療が可能
全体の矯正治療に比べると矯正の範囲が狭いため、低価格で矯正治療を受けることができ
ます。
- 矯正装置が目立ちにくい
歯の全体の矯正で全体的にワイヤーを装着するより矯正の範囲が狭いので「目立ちにくい」
ということになります。
- 気になる部分だけにピンポイントで治療できる
- 短期間で治療期間が終了する
全体の矯正治療に比べると矯正の範囲が狭いため、治療期間も短くなります。
- 矯正中の痛みや、噛み合わせが変わることによる違和感が少なくて済む
- 負担が少ない
矯正装置が一部分にしか装着していないため、食事の際のストレスなど、患者さんの負担が
少ないです。
部分矯正には様々なメリットがある
■部分矯正のデメリットについて
- 見た目の改善が目的になりますので、歯本来の機能の根本的な改善までは及びません
- 基本的には簡単な症例のみ適応可能
■部分矯正で治せる症状について
○軽度の出っ歯
出っ歯とは、一般的には前歯が前方に向かって出てしまっている状態のことで、口を閉じて
いても前歯が少し見えていたりする場合もあります。出っ歯により咬合の機能に問題が生
じている状態を歯科の専門用語では「上顎前突症」といいます。
○軽度の受け口
受け口とは、下の歯が上の歯よりも出ている状態で、出っ歯の逆の状態となります。受け口
の場合問題となるのは、噛み合わせが悪く食べ物を咀嚼するときに十分に咀嚼できずに飲
み込んでしまうので消化気管に負担をかけ続けてしまい、身体の成長や、脳の働きにも影響
を与えてしまいます。また、顎関節症を発症しやすくなってしまう、言葉の発音がしづらく
なる、全身のバランスが悪くなる、など身体にも悪影響を及ぼすことがあります。
こちらも軽度であれば、部分矯正で改善することが可能です。
歯科の専門用語では、「反対咬合」または「下顎前突症」といいます。
○軽度のでこぼこの歯
隣の歯と重なって生えていたり、歯がずれて生えていたり、八重歯もこちらの一種で、基本
的に歯がでこぼことしている状態です。歯科の専門用語では「乱杭歯」や「叢生」といい、
基本的に歯並びが良くない状態です。
○すきっ歯
すきっ歯とは、外から見て歯と歯の間に隙間ができている状態のことを言います。歯科の専
門用語では「空隙歯列(くうげきしれつ)」と呼ばれていて、この空隙歯列の中でも前歯と
前歯の隙間が大きい状態のことを「正中離開(せいちゅうりかい)」といいます。
○開咬
開咬とは、オープンバイトとも呼ばれ、奥歯はしっかりと噛んでいるのに前歯が噛み合って
いなくて開いている状態をいいます。前歯が噛み合っていないので、前歯で食べ物を噛み切
れなかったり、発音がうまくできない、食べるときに咀嚼音をたててしまう、などの日常生
活に支障をきたす場合があります。
部分矯正は全体的に歯を動かすのではなく、一部のみ動かすことを目的とした治療法です。
矯正治療は歯並びを綺麗にすることが目的ではなく、正常なかみ合わせを作ることが目的
になります。
無理に部分矯正をしてかみ合わせがおかしくなったということがないように、しっかりか
み合わせのことまで考えたうえで部分矯正を選択できるようにお手伝いさせていただきま
す。
■当院における矯正について
三軒茶屋デンタルデザイン歯列矯正歯科では「歯からきれいになりたい」という患者様のお
手伝いをしたいと考えております。
口元の印象を決めるのはまずは「歯並び」がとても重要です!
第一印象で好感を一番得られるのは「清潔感」が最も重要だそうです。確かにお顔の印象は、
「笑顔が一番」ですね!!
当院では、「歯に関するお悩み・患者様が矯正治療に求めていること」をしっかりと丁寧に
カウンセリングをさせていただき、一人一人の患者様に合った矯正方法をご提案させてい
ただきます。
当院における矯正治療の特徴は、初診の相談料が「無料」はもちろんのこと、通常、他の矯
正歯科医院では有料(3~5 万円)の検査費用も「検査診断料」として「無料」となっており
ます。
どんな治療でもメリットとデメリットはあります。
部分矯正で対応できない場合は、他の治療案内を行います。
当院では患者様のライフスタイルに合わせた治療を心がけております。
まずは患者様のお悩みをしっかりと聞かせていただき、現状のリスクと治療計画、一人一人
の患者様に合った選択肢をご提案させていただければ、と考えております。
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矯正力の種類
2021年10月10日
こんにちは
矯正治療では、乱れた歯の位置を整えて、歯並びをきれいに揃えます。
そのために、歯を移動させるわけですが、放っておいても歯が勝手にいい位置に動いてくれるわけではありません。
歯を理想的な位置にまで移動させるために、歯や顎の骨に歯を動かす力を加えます。
この力を『矯正力』といいます。
どんな矯正装置を使って矯正治療を行うとしても、『矯正力』が発揮できないことには歯並びをきれいな状態に整えることはできません。
今回は、矯正治療を成功させるカギと言っても過言ではない『矯正力』についてお話しします。
■矯正力と整形力の違い
矯正治療で歯並びを整えるために作用させる力に、もうひとつ整形力という力があります。
先ほど、歯並びを整えるために歯や顎の骨に加える力を矯正力というと書きました。
矯正力と整形力にはどのような違いがあるのでしょうか。
実は、広い意味では整形力も矯正力に含まれます。
なぜなら、矯正力のうち、顎骨に加える力を区別して整形力とよんでいるからです。
矯正力とひとことで表現せずに、整形力とわざわざ別々の言葉を使って置き換えるのには、理由があります。
顎の骨を移動させることや顎の骨の成長方向をコントロールすることも、歯並びを整えるために、歯を移動させることと同じくらいに、とても重要だからです。
ちなみに、顎の骨に加える力を整形力という言葉を使って説明するとき、同時に用いる矯正力という言葉は、純粋に歯を移動させるために作用させる力のみを指します。
矯正治療というと、単に歯を移動させているだけのように思われるかも知れませんが、整形力という別のことがあることから、矯正歯科医は、歯だけでなく、顎の骨のことも考えて歯並びを整えていることが、おわかりいただけたのではないでしょうか。
■矯正力の種類
歯を移動させる矯正力、実はこの矯正力にもいろいろな種類があり、大きく分けると器械的矯正力と機能的矯正力の2種類になります。
○器械的矯正力
器械的矯正力とは、器械、すなわち矯正装置自体から生み出される矯正力のことです。
器械的矯正力にもいろいろな種類があります。
◇ワイヤー
ワイヤーによる矯正力は、矯正治療の中でもっともオーソドックスな矯正力です。
ワイヤーは形状記憶合金で作られています。
ワイヤーを歯に装着すると、変形します。
ワイヤーは形状記憶合金で作られているため、変形したワイヤーは元の形に戻ろうとします。
ワイヤーによる矯正力は、使われている金属の材質や、ワイヤーの太さ、ワイヤーの作用部位までの長さ、丸型や角型などの断面の形、直線やループなどのワイヤーの形などによって違いがあります。
ワイヤー矯正では、ワイヤーを選ぶことで適切な矯正力を作用させます。
◇エラスティック
エラスティックとは、ゴムのことです。
ゴムの弾力性を使って歯を移動させます。
矯正治療では、さまざまな材質のエラスティックを使って矯正力を得ます。
エラスティックは、紐状のものもあれば、リング状のもの、太いエラスティック、細いエラスティック、大きなエラスティックに小さなエラスティックといろいろあります。
その中から適切なものを選んで、歯を移動させていきます。
◇スクリュー
スクリューは、日本語に言い換えると拡大ネジで、上顎に用いられる拡大装置についています。
スクリューから発生される強制力は、ネジを回転させることで生み出されます。
矯正力のひとつに分類していますが、歯を移動させる矯正力だけでなく、上顎骨のサイズや上顎の歯並び自体を大きくする整形力としても利用される力です。
スクリューは、ネジを回転させた直後は強い力で作用できるのですが、この力は急速に衰えてしまいます。
したがって、スクリューによる矯正力は、持続的に作用するものではなく、断続的に作用する矯正力ということになります。
◇アライナー
アライナーとは、最近、話題になっているマウスピースタイプの矯正装置のことです。
当院で、人気の高いインビザラインもこれに当てはまります。
マウスピースタイプの矯正装置では、アライナー、つまりマウスピース自体が矯正力の源となるため、顎関節症の治療で使われるマウスピースと比べると、とても硬く作られています。
アライナーによる矯正力は、装着中、常に作用し続けます。
○機能的矯正力
機能的矯正力とは、矯正装置ではなく、ご自身のお口の周囲の筋肉の働きで歯を移動させる矯正力です。
もっとも、何もせずに歯が勝手に移動して理想的な位置に並んでくれるわけではありませんから、何かしらの矯正装置は必要です。
機能的矯正力を得るときに用いるのが、機能的矯正装置というタイプの矯正装置です。
機能的矯正装置にはいろいろなタイプがあり、代表的なものがアクチバトールです。
その他、咬合斜面板やリップバンパーなどもあります。
機能的矯正装置は、ワイヤーやマウスピースなどの器械的矯正力を発揮する矯正装置と違って、それ自体が歯を動かすわけではありません。
では、どのようにして歯を移動させるのか、それが筋肉の力です。
ただ、必ず機能的矯正装置を利用しなければ、機能的矯正力を発揮できないのかというとそんなことはありません。
機能的矯正装置を利用しないで、口腔筋機能療法(MFT)という唇や舌の訓練で機能的矯正力を得ることもあります。
矯正力は器械的矯正力と機能的矯正力の2種類
■矯正力の強さ
では、『矯正力』は、どれくらいの力を歯に加えているのでしょうか。
歯を移動させるのに、どれくらいの矯正力が必要なのかを考えるポイントがあります。
○歯の大きさや、歯根の数とその形
大きい奥歯を移動させるのと、小ぶりな前歯を移動させるのでは、自ずと必要な力が違ってくるのはわかっていただきやすいと思います。
例えば、前歯をみてみると、一見すると同じように見えても、犬歯だけは他の歯と比べて歯根の長さがとても長くなっています。
根が長い歯もやはり動かすのは難しくなります。
歯根の形も矯正力を考えるうえで大切な要素のひとつです。
○歯に加わる筋肉の力
歯の位置は、唇や頬、舌などの筋肉のバランスの取れたところにあります。
どれくらいの矯正力を考えるとき、筋肉のバランスに打ち勝てるだけの力を考えなければなりません。
○力の方向や時間など
矯正力と書きますから、どうしても力の大きさにばかり目がむかいがちです。
実際には、力の大きさだけではなく、どの方向に向かって力を加えるのか、どれくらいの時間力をかけ続けるのか、また、力の源となるところから歯までどれくらいの距離を設定するのかなども重要なポイントです。
このように、矯正力をどれくらいにするのかを決めるためには、たくさんの要因が複雑に絡み合っていることがわかってもらえると思います。
歯を動かすために最も適した矯正力を一律に決めることはできません。
どれくらいの力をどの方向に、どれだけの時間加えるのか、これが矯正治療の成功の礎となるわけですが、それを決めるのが、矯正治療にあたる歯科医師の長年の経験と知識です。
なんだか職人技みたいですね。
■矯正力の作用時間
矯正力には、作用時間によって『持続的な力』と『断続的な力』の2種類に分けられます。
○持続的な力
持続的な力とは、文字通り矯正力が途絶えることなく、ずっと加わり続ける矯正力のことです。
ワイヤーやマウスピースなどの器械的矯正力の多くが、この持続的な力になります。
持続的な力では、矯正装置を使っている間、矯正力の減りがほとんどないか、とてもゆるやかになっています。
先ほど例に挙げた矯正装置以外に、エラスティックや補助弾線という細いワイヤーなどでも持続的な力を加えることができます。
○断続的な力
断続的な力とは、途切れ途切れに加わるタイプの矯正力です。
代表的な断続的な力としては、スクリューから得られる矯正力が挙げられます。
スクリュー以外では、太めのワイヤーから得られる矯正力も断続的な力に含まれますが、作用距離が短いために、歯が少し移動すれば、矯正力はたちまち0になってしまいます。
これを何度も繰り返すことで、歯を移動させていきます。
なお、断続的な力は、持続的な力と異なり、矯正力の大きさは強くなります。
○間欠的な力
間欠的な力とは、ある一定の時間だけ作用するようになっている矯正力です。
アクチバトールや咬合斜面板などの筋機能矯正装置がきちんと機能したときに得られる矯正力が、この間欠的な力に当たります。
断続的な力と間欠的な力は、矯正力が持続しないという点で、とても似ています。
そのため、断続的な力も間欠的な力のひとつとして捉える見方もあります。
■歯の動き方
適切な矯正力が歯に作用した場合の歯の移動の仕方は、5種類あります。
『傾斜移動』『歯体移動』『回転』『挺出』『圧下』です。
○傾斜移動
歯の頭である歯冠に横向きに単純な力を加えると、歯は傾きます。
傾斜移動とは、これを利用した歯の動かし方です。
傾斜移動では、歯の根の先3分の1あたりを中心として歯が回転し、歯の根の先は歯冠と反対方向へ移動します。
傾斜移動に必要な矯正力は、一般的に50〜75グラムと言われています。
○歯体移動
歯体移動とは、歯間も歯根も同じ方向に同じ分だけ移動させる歯の動かし方です。
歯をそのまま横にずらすような動かし方といえばイメージしやすいかも知れません。
傾斜移動では、歯に1箇所だけ力を加えればよかったのですが、歯体移動では2箇所に同時に力を加えなければなりません。
歯体移動を行うためには、100〜150グラム程度の力が必要とされています。
○回転
回転では、歯の位置そのものは変わりません。
歯の軸を中心に回転させる歯の動かし方です。
回転に必要な矯正力は、50〜75グラムとされており、傾斜移動と同じくらいです。
○挺出
挺出とは、歯が上方へ引き抜かれるような歯の動かし方です。
挺出は、最も弱い力で行わなければなりません。
歯を挺出させるのには、15〜20グラムほどの矯正力に抑えなければなりません。
○圧下
圧下とは、挺出の逆で、歯を骨の方向に押し込む動かし方です。
元々、噛み合わせることで歯には沈み込む力が常に加わっていますから、圧下は一筋縄ではいきません。
矯正力の中でも、最も強い力を加える必要があります。
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矯正(抜歯と非抜歯の判定方法)
2021年10月8日
こんにちは
矯正治療では、歯並びをきれいに整えるために、歯を抜歯してスペースを確保するようなことがしばしば行われます。
何しろ、ある統計によれば、歯の並ぶスペースが不足することによる乱杭歯や八重歯の占める割合は、矯正治療を希望する方のなんと20〜30%にもなるそうです。
「歯並びをきれいにするために抜歯をすすめられた」なんて話がよく聞かれるようになるのも、納得ですね。
これは当院でも同じです。
では、どのような基準で、抜歯するか、抜歯せずに歯並びを整えるのかを決めているのでしょうか。
そこで、今回は、矯正治療で抜歯するかどうかの判断方法についてお話ししようと思います。
■各国で異なる抜歯への理解
今でこそ、歯並びをきれいに整えるための抜歯が市民権を得るようになりましたが、実は今のような近代的な矯正治療が始まった頃はそうではなかったようです。
例えば、今から100年ほど前の1920年代から1930年代ごろまでは、矯正治療を目的とした永久歯の抜歯について、今では矯正歯科学の教科書にも載る近代矯正歯科医学の父ともよばれているアングル先生は否定的だったそうです。
一方、肯定派の代表格は、アングル先生と同じくらい有名なケース先生でした。
両者の間で、本当に永久歯を抜歯しなければ歯並びをきれいに整えられないのかどうかで、喧々諤々の議論が重ねられたようです。
このときの主流は、アングル先生派でした。
そのためか、現在でもアメリカではできるだけ抜歯をしないで矯正治療をしようという風潮があるとかないとか。
ところで、我が国では、上顎骨と下顎骨の骨格そのものが前に出ている、
そのため、矯正治療のための抜歯に比較的に、同意してもらいやすい傾向があります。
そして、社会的にもアメリカ人やヨーロッパ人のような口元の引き締まった横顔を望むことが多いことから、必然的に抜歯せざるを得ないケースが多くなっています。
そのため、矯正治療のための抜歯に比較的、同意してもらいやすい傾向があります。
■矯正治療で抜歯が必要となるケース
矯正治療で抜歯が必要となるのは
①歯の幅の長さの合計と、歯が並ぶスペースの長さのバランスが取れていないとき
②上顎と下顎の前歯の重なり具合を適度なものにしたいとき
③上顎と下顎の奥歯の噛み合わせを適切なものにしたいとき
④上顎の歯と下顎の歯のサイズがアンバランスなとき
以上の4つのケースとなります。
①は理解していただきやすいと思いますが、②③は意外ではないでしょうか。
例えば、③は⑤にも関係しています。
■抜歯するかどうかの判定方法
では、矯正治療に際して、抜歯が必要かどうかを、どのようにして私たち矯正歯科医師を判定しているのでしょうか。
大きく分けると、歯並びの石膏模型を作って判定する方法と、レントゲン写真と歯並びの石膏模型を使って判定する方法のふた通りになります。
なお、これらの方法を使って判定を試みようとしても、抜歯するかどうかについて判定するのが難しいボーダーライン上になってしまうことも珍しくありません。
そのようなときは、判定結果にしたがって一律に決定するのではなく、患者さん自身の矯正治療への協力の具合や年齢、お顔の審美的な評価、お顔や顎の骨の形のバランスなどを考えて判断します。
そのため、矯正歯科医の診断や治療方法の違いから、抜歯するか抜歯しないかの割合も異なってきます。
よそでは抜歯しなくてはいけないと言われたのに、違うところの歯科医院では反対のことを言われた、なんてこともあるようですが、抜歯するかどうかを決めるのは、今もってとても難しく、私たち矯正歯科医は常に厳しい決断を迫られているのです。
■石膏模型を使った判定方法について
では、まずベーシックな方法である石膏模型を使った判定方法からご説明します。
歯を並べる顎の骨のスペースの長さは、一般的には、片側の第一大臼歯の前から反対側の第一大臼歯の前までの長さを測って算出します。
第一大臼歯は、6歳臼歯という別名を持つ奥歯のことです。
○石膏模型を作る
まず、お口全体の歯型を取り、その歯型に石膏を流し込んで、歯の模型を作ります。
石膏模型ができたら、次に細く軟らかい針金などを用意します。
○針金を使って測る
右側と左側の第一大臼歯の間の正しいと思われる歯並びを予想して、針金を曲げて、その針金の長さを測ります。
ちなみに、針金を使って得られたこの長さを、アベイラブル アーチ レングス(avaiable arch length)といいます。
アベイラブル=利用できる、アーチ=歯並び、レングス=長さという意味です。
ちなみに、並べなければならない歯の幅の長さの合計値は、リクワイアード アーチ レングス(required arch length)といいます。
リクワイアードとは、必要とされるという意味ですね。
○歯の幅を測る
アベイラブル アーチ レングスがわかったら、次はリクワイアード アーチ レングスです。
第一大臼歯の前の歯、つまり第二小臼歯から、反対側の第二小臼歯までの歯の幅を一つずつ測って、その値を全て足します。
これが、リクワイアード アーチ レングスになります。
○計算
アベイラブル アーチ レングスとリクワイアード アーチ レングスが計算できたら、両者を引き算します。
この差をアーチレングス ディスクレパンシーといいます。
アーチレングス ディスクレパンシーがプラスなら、抜歯しなくても歯並びはきれいになりますが、もしマイナスだったら必ず抜歯ではありません。
基準以上にマイナスの値が大きくなったら抜歯を検討します。
抜歯の判定には石膏模型やレントゲン写真が用いられる
■レントゲン写真を使った判定方法について
先ほどお話しした石膏模型を使った計測方法は、とてもシンプルでわかりやすい方法なのですが、実は欠点も隠されています。
石膏模型を使った計測方法では、上顎と下顎の歯並びの前後的な位置関係や、前歯と顎の骨やお顔などとの位置関係まではわからないのです。
そこで、前歯自身の傾き具合や上顎と下顎の前歯、そして奥歯の噛み合わせ、お顔のバランス、唇や鼻のバランスを知るために、レントゲン写真を組み合わせて判断する方法が考えられました。
レントゲン写真を使って判断する方法は、ふた通りになります。
ツィード先生の考案した方法と、シュタイナー先生の考案した方法です。
いずれの方法も、石膏模型を使って算出したアーチレングス ディスクレパンシーに加えて、レントゲン写真を応用するようにしています。
ここでいうレントゲン写真とは、お口の歯並びを写し出しているパノラマエックス線写真ではなく、頭部エックス線規格写真という矯正歯科治療のために使われているレントゲン写真写真です。
特にツィード先生は、先にご紹介したアングル先生の弟子のような矯正歯科医です。
彼は、師であるアングル先生の意見と異なり、「非抜歯症例の矯正治療では、成功症例は2割、失敗症例は8割」と抜歯肯定派だったようです。
ツィード先生は、矯正治療の目標について
- 均衡のとれたバランスの良い顔立ちを得ること
- 矯正治療を終えた後の歯並びが安定的で適正であること
- 歯周組織をはじめとするお口のさまざまな組織が健康的であること
- しっかりと上顎と下顎の歯が噛み合わせられること
としていました。
そんなこともあり、抜歯するかどうかの事前の診断をより重要視していたそうです。
彼は、下顎の前歯の位置が決まれば、奥歯の位置が自動的に決まり、この下顎の歯の並びに合わせて上顎の歯の並びが決まると考えていたそうです。
そのために、下顎の歯並びと顎の骨のバランスの算出方法を重視し、とても複雑な分析方法を作り出しました。
ツィードの分析方法は精密で優れているのですが、とても複雑でした。
そこで、より使いやすい方法として考案されたのが、シュタイナー先生の分析方法です。
レントゲン写真をもとに、その分析結果を分析チャートに順次記入して算出します。
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矯正治療の固定とは
2021年9月24日
こんにちは
矯正治療では歯並びをきれいに整えるために、歯を移動させます。
このとき、大切なのが固定です。
移動と固定とは、全く逆の行為なのですが、実は固定こそが矯正治療を成功させるカギともいえ、移動と固定は切っても切れない関係にあります。
今回は、矯正治療で重要な固定についてお話しします。
■固定が欠かせない理由
例えば、あなたが荷物の乗った台車を押すとします。
もし、あなたの足元の地面がツルツルになっていれば、いくら押しても足が滑ってしまい台車は一向に動きません。
これは、あなたが台車を押した力が、台車に作用せず、逃げて失われてしまうからです。
台車を動かすためには、あなたの足が滑らないように、足をしっかりと地面に踏ん張っておかなければなりません。
矯正治療も同じで、歯を移動させようとしても、力が逃げてしまうようでは、歯を動かすことはできません。
踏ん張る力が必要です。
この歯を移動させるために踏ん張る力が固定なのです。
■矯正治療における固定とは
続いて、歯を移動させるための固定について詳しくみていきましょう。
矯正治療における固定とは、歯または顎の骨の移動にあたっての抵抗源のことです。
矯正治療では、一般的に歯を抵抗源、つまり固定に使うことが多いです。
歯を固定に利用しない場合は、上顎や頭部、頚部なども使います。
ちなみに、当院でも行っているインプラント矯正では、顎の骨に埋め込む矯正治療用のアンカースクリューが抵抗源となっています。
このために、矯正治療における固定となっている歯やアンカースクリュー、場合によっては頭部や頚部には、歯や顎の骨を移動させようとして加えられている矯正力と同じだけの強さを持つ力が反対方向に加わることになります。
私たち矯正歯科医は、歯を移動させようとするとき、これらの反対方向に発生する力があることを常に念頭において治療にあたっています。
■固定の分類
固定とひとことで表しますが、実は固定にもいろいろな固定があります。
○固定の性質による分類法
基本的な固定の分類法のひとつが、固定の性質に基づく分類法です。
◇単純固定
単純固定は、最もシンプルな固定です。
これは、固定となっている歯に傾斜移動させようとするときに加わる力に対する抵抗力を利用した固定です。
とてもシンプルなため、単純固定の固定力はあまり強くありません。
したがって、固定歯は止まってくれず、傾斜移動します。
単純固定の固定力の強さは、歯の歯根の大きさや数、形によって異なります。
歯根が大きいほど固定力は強くなることはいうまでもありませんし、1本だけの歯根よりも2〜3本の歯根の方が固定力は強いです。
そのほか、隣に生えている歯との当たり方や、噛み合わせている歯との噛み合わせの状態も単純固定の固定力の強弱に関係しています。
単純固定には、ふつうは移動させようとする歯よりも大きな歯、歯根のしっかりしている歯を利用します。
◇不動固定
単純固定では、固定となる歯が傾斜してしまいます。
歯が傾斜するということは、固定となった歯の並びが悪くなることを意味しています。
そこで、歯を傾斜させないように移動させる、つまり歯体移動となるようにしたときの固定方法を不動固定と言います。
歯の傾斜移動と歯体移動を比較すると、歯体移動の方が強い力を必要とします。
すなわち、単純固定と不動固定では、不動固定の方がはるかに強い固定力を得られる固定であることがわかります。
不動などと大それた名前がついていますが、決して名前負けしてはいないんですね。
ただし、不動固定であっても、全く固定歯が動かないというわけではありません。
少しは移動しますから、矯正歯科医はそれを含めて治療計画を立てています。
◇相反固定
相反固定は、ちょっとややこしい固定です。
歯1本、もしくは歯何本分かの抵抗力が、これに対応するやはり歯1本、もしくは歯何本分かの移動に使われる場合の固定です。
相反固定は、移動させようとする歯と固定しようとする歯の双方に等しく反対に向く力が加わり、同じように移動するとき、それぞれが移動と固定の役割を担っています。
どうです、ちょっと言葉にするとややこしいでしょう。
簡単にいうと、移動させようとする歯同士が、引っ張り合ったり押し合ったりすることで、相手側に生まれる固定という感じです。
ですから、固定側が移動側ともなり、移動側が固定側ともなりうる固定といったところでしょうか。
一般的に、矯正治療では、どのような矯正装置を使っても、移動する歯だけでなく、固定しようとする歯にも同じように反対方向の力が作用し、移動します。
この点から考えてみると、矯正治療における固定のほとんどが、相反固定ということになります。
ですが、相反固定というとそれぞれが同じように移動しようとする場合の固定のみを指します。
◇加強固定
加強固定は、かきょうこていと読みます。
強さを加えると書くように、固定力を強くすることをいいます。
どうして固定力を強くしようとするのか。
それは、固定となっている歯ができるだけ移動しないようにするためです。
固定となる歯が動くと、歯の移動がややこしくなってしまいます。
ルービックキューブを解くとき、クルクルと回してしまうと、どれが動いているのか訳がわからなくなりますよね。
ルービックキューブを解くためのポイントは、視点を1箇所に固定することです。
矯正治療も同じで、固定となっている歯が動かない方が、矯正治療は進めやすいわけです。
そこで、加強固定では、固定となる歯を増やしたり、頭部や頚部などの顎外固定を使ったりすることで、より強い安定した固定を得ようとします。
また、リップバンパーなどを使って、お口を取り巻くさまざまな筋肉の筋力を加強固定に利用することもあります。
◇準備固定
準備固定とは、マルチブラケット法のひとつであるエッジワイズ法で、ツイードさんが考え出した固定をより強くするための固定方法です。
上顎の前歯を後ろ方向に移動させるときに、固定となる下顎の奥歯が前方方向へ傾斜移動するのを防ぐ目的で行われます。
そこで、準備固定では、あらかじめ下顎の奥歯を後方に傾斜させておいて、固定力を高めておきます。
基本的には、マルチブラケット法のエッジワイズ法に用いられる固定法ですが、そのほかの矯正治療の固定にも用いる場合もあります。
○抵抗源の部位による分類法
固定の際の抵抗源から分類する方法もあります。
◇顎内固定
顎内固定は、がくないこていと読みます。
顎内固定とは、骨折のときの固定法のひとつですが、矯正治療での顎内固定は少し方法が異なります。
移動させる歯と固定となる歯が、上顎もしくは下顎のそれぞれの顎内にある場合の固定です。
マルチブラケット法の場合の固定が、これに当たります。
このほかに、舌側弧線装置という歯の内側にワイヤーを通すタイプの矯正装置や、拡大床などの床タイプの矯正装置も当てはまります。
◇顎間固定
移動させようとする歯や顎の骨に対して、固定源が反対の顎にある固定です。
下顎の歯を移動させようとする場合に、上顎に固定源を求めようというような移動と固定が上下の顎に分かれている固定のことです。
顎間固定の固定力は、エラスティック、つまりゴムによって得られます。
具体的には、引き伸ばされたゴムリングが縮もうとする力です。
例えば、上顎前突、いわゆる出っ歯ですね、この場合に上顎の前方から下顎の後方にかけて斜めにかけるゴムや、反対に下顎前突、つまり受け口の場合に上顎の後方から下顎の前方にかけて斜めにかけるゴムなどがあります。
ちなみに、顎間固定は、先の分類にしたがうと相反固定に分類されます。
◇顎外固定
顎外固定とは、その名前の通り、歯や顎の骨を移動させようとするときの抵抗源が、お口の外に設けられている固定法です。
固定力の高さが顎外固定の利点ですが、見た目が良くないのが難点です。
顎外固定に使う矯正装置は、ヘッドギアやオトガイ帽装置、上顎前方牽引装置などが代表的です。
顎外固定は固定力がたいへん高いので、顎の骨に力を加えようとする整形力や、奥歯を後ろに移動させる歯の移動の場合に、よく使われます。
また、加強固定として顎外固定を用いることもあります。
固定は性質・部位・強さで分類できる
○固定力の強さからの分類
固定力がどれくらい強いかによる分類もあります。
乱杭歯の治療や、上顎前突症の治療、下顎前突症の治療では、歯を理想的な位置に収めようとしても、スペースが足りないことがあります。
そんなときは、小臼歯という前から4番目や5番目の歯を抜いて歯を並べるスペースを確保しようとします。
このとき、抜いて得られたスペースに向かって、前から3番目の犬歯を後ろに下げたり、前歯全体を内側に下げたりするような歯の移動を試みます。
しかし、実際には隙間が少し残ってしまうことが多く、そのようなときには、前歯を動かすための固定源となっている奥歯を前に寄せてきて隙間を埋めます。
それ以外の場合、例えば、上顎の奥歯が下顎の奥歯よりも前にずれている奥歯の歯並びの異常や下顎前突症を治す場合に、上顎や下顎の奥歯を前方に移動させようとすることがあります。
これら、奥歯の移動に際して、どれくらい移動させるのか、それによって固定の強さを変更します。
したがって、固定力の強さもとても大切な要素です。
固定力の強さは、『最大』『中等度』『最小』の3つに分類されています。
◇最大の固定
最大の固定とは、奥歯を前方に移動させる移動距離を、小臼歯を抜いて得られた隙間の1/4以下にしたいときの固定力です。
◇中等度の固定
中等度の固定とは、奥歯の前方への移動量が、小臼歯を抜いて得られた隙間の1/4から1/2程度の幅にしたいときの固定力です。
◇最小の固定
最小の固定とは、奥歯の前方への移動量が、小臼歯を抜いて得られた隙間の1/2以上の場合の固定力です。
ここからわかることは、奥歯をより前方へと動かしたいときは、固定力を弱くして、反対にあまり動かしたいくないときは、固定力を強めるということです。
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矯正治療と虫歯歯周予防
2021年9月17日
こんにちは
現在の矯正治療は、ブラケットとワイヤーを使ったマルチブラケット法が主流です。
この矯正治療法では複雑な矯正装置を使うため、食べ物の流れが悪くなるばかりか、歯磨きもとても難しくなります。
近年、新しく登場し、目立たない、取り外しができるなどの利点から、当院でも需要が高まっているインビザラインのようなマウスピース矯正なら、歯磨きはしやすくなります。
ですが、つけている間の唾液の流れが悪くなることから、唾液の持つ汚れを洗い流す働きや虫歯菌の活動を抑える働き、初期虫歯を治す働きが発揮できなくなります。
マルチブラケット法、インビザライン、ともに矯正治療中の虫歯のリスクからは逃れられないようです。
そのため、矯正治療中は、より一層のお口のケアが望まれます。
今回は、矯正治療とお口のケアについてお話ししたいと思います。
■矯正治療での抜歯の目的
矯正治療を受けている間は、歯磨きをはじめとするお口のケアが難しくなります。
食べたものも残りやすいですし、お口の中も不潔になりやすいです。
ちょっと油断するとたちまち矯正装置の周囲に虫歯が生じたり、歯ぐきが腫れたりします。
矯正治療中は特にお口のケアが重要とされるのはこのためです。
○虫歯のリスク
虫歯の原因は、歯の表面をおおうプラークに潜んでいるストレプトコッカス・ミュータンスなどのレンサ球菌であることが明らかになっています。
プラークの中で虫歯の原因菌が、磨き残しの中の炭水化物を分解して乳酸を作り出し、この乳酸が長期にわたって歯のエナメル質に接触し続けることで、エナメル質が脱灰され虫歯が発生します。
すなわち、虫歯が発生するには、『歯』と『細菌』、『細菌のエサ』の3つの条件が揃う必要があり、どれか一つでも欠けると虫歯にはなりません。
余談ですが、わたしたち歯科医師は、学生の頃からこの3つの発生要因を円にして、それらが重なり合った図を、これでもかというほど教え込まれます。
矯正治療を受けている間は、これらの3要素が簡単に揃いやすく、虫歯になりやすい傾向が指摘されています。
○歯周病のリスク
歯周病も、細菌が原因で起こる炎症性の病気です。
歯周病の原因菌も、虫歯と同じくプラークの中にいます。
実は、プラークの場所によって細菌の種類に違いがあることがわかっています。
特に影響しやすいのが、歯と歯ぐきの隙間である歯周ポケットの中にいる嫌気性のグラム陰性桿菌です。
矯正装置が装着されると、歯周ポケットの部分にまで歯ブラシの毛先が届きにくくなりますから、歯周病のリスクも高まるのです。
■矯正治療と虫歯
矯正治療を受ける前の段階では、虫歯の原因菌が潜んでいるプラークは、歯の付け根付近、歯と歯の間、噛み合わせ面の溝、乱杭歯の重なり合っているところなどに発生しやすい傾向があります。
その他、生え切っていない歯や、上顎と下顎の前歯の裏側にもつきやすいです。
言い方を変えると、ちゃんと生えている歯の表面にはあまりついていないとも言えます。
ところが、矯正治療がいざ始まると、このプラークの付きやすいところが変化します。
矯正装置が装着されるため、お口の中の状態が複雑化するからです。
そのため、歯に部分的にプラークがつくのではなく、矯正装置の周囲を含めて、歯の表面全体にプラークがつきやすくなります。
特に注意が必要なのが、マルチブラケット法による矯正治療のときで、ひどい場合はブラケットやバンドの表面にまでプラークが付着します。
ワイヤーの下の部分も要注意です。
また、金属バンドのフィットが悪い場合は、プラークがより付着しやすくなり、セメントが溶け出し、隙間を作ってしまいます。
金属バンドと歯との隙間には歯ブラシは入らないので、この部分にプラークが溜まるとそこから虫歯が発生することになります。
一見すると歯は綺麗に磨いてあり、プラークがついていないように見えることもありますが、見えにくいだけという場合がほとんどです。
実際、プラークの染め出し液を塗ってみると、プラークの付き具合がよくわかります。
■矯正治療と歯周病
○歯列不正と歯周病
歯並びの悪い方の多くは、すでに歯周病になっている傾向がみられます。
その理由は、いろいろあります。
例えば、噛み合わせている歯や隣の歯との位置関係が良くないために、正しい噛み合わせが得られていないこと、お口が本来持っている唾液などを利用した歯の表面の汚れを洗い流す働きが下がっていることなどです。
また、歯並びが重なり合っているなどの原因で、歯ブラシが歯ぐきを適度に刺激できないことも影響していると考えられています。
多くの場合は、矯正治療を受けて歯並びが整えられると、これらの歯周病を引き起こしていると考えられる原因は解消されるため、歯周病の症状は改善されます。
しかし、これはあくまでも矯正治療が終わった後の話です。
矯正治療を受けている間は、矯正装置が入っていることでお口の中の清掃状態が悪くなってしまいます。
マルチブラケット法の矯正装置はもちろんですが、インビザラインのようなマウスピース矯正もしかりです。
プラークが増えたり、食べカスが残ったままになったりすることが、歯ぐきの腫れを引き起こすことは明らかです。
○実は子どものときから始まっている歯周病
歯周病というと、大人の病気と思われがちですが、実は小学校に入る前のお子さんの2割ほどに歯ぐきの腫れ、つまり歯肉炎が見られます。
歯肉炎も立派な歯周病のひとつです。
ここから年齢が上がり、乳歯と永久歯が混ざり合った混合歯列期という状態の年齢では、特に10代前半にかぎってみると、80%近くに歯肉炎が起こっているとも言われています。
混合歯列期が終わり、永久歯だけの歯並びになってくると、歯肉炎から歯周炎に発展します。
簡単にいうと、歯肉炎は単に歯ぐきが腫れただけの状態ですが、歯周炎は歯ぐきの腫れだけでなく、歯を支えている骨が減ってしまう歯周病です。
10代後半から20代前半でみるとおよそ70%に歯周炎が起こっています。
ちょうどこの年齢層は、矯正治療を受けている年齢層にほぼ一致します。
冒頭に、『歯並びの悪い方は矯正治療を受ける前からすでに歯周病になっている』と書いたのには、こういう背景があったわけです。
■矯正治療中の虫歯の予防
虫歯の予防法の基本は、先にご紹介した『歯』と『細菌』、『細菌のエサ』の3つの条件を断ち切ることです。
ひとつでも欠けると、虫歯は起こりません。
矯正治療中に虫歯になると、矯正装置を除去して虫歯の治療に専念しなければならなくなることもありますから、そうならないように適切に予防することが大切です。
○歯を強くする
虫歯の原因菌が作り出す乳酸にエナメル質が溶かされないようにするためには、酸に対して歯を強くすることです。
その方法が、『フッ化ナトリウム』という薬です。
みなさんが『フッ素』とよんでいらっしゃる薬は、正しくは『フッ化ナトリウム』といいます。
フッ化ナトリウムを歯に作用させると、それだけで歯を酸に対して溶かされにくい強い歯にすることができます。
フッ化ナトリウムの配合されたうがい液でうがいをしたり、フッ化ナトリウムのジェルを歯に塗ったりするほか、フッ化ナトリウムの配合された歯磨き粉で歯を磨くことも効果的です。
特に、最近では1450ppmという高濃度フッ素配合歯磨き粉が販売されていますから、日常の歯磨き粉をこれに変えるだけで、虫歯予防効果が高まります。
ただし、6歳未満のお子さんには使えないのでご注意ください。
○虫歯の原因菌を減らす
虫歯菌を減らすためには、虫歯菌が潜んでいるプラークを取り除くこと、つまりプラークコントロールが1番の対策です。
お口のケア イコール プラークコントロールと言われるほどに、プラークコントロールは、お口のケアの基本です。
プラークを取り除く方法は、歯磨きで物理的にプラークを取り除くことが最も効果的です。
矯正治療中は、歯磨きがしにくくなりますから、ワンタフトブラシなど特殊は歯ブラシを使ってみるといいでしょう。
また、プラーク自体を作り出さないようにするために、近年販売されているプラークを抑える効果のあるマウスウォッシュを使ってみるのもいいですね。
○食べ物の工夫
虫歯菌の栄養源を断つことも虫歯予防のポイントです。
具体的には、虫歯菌は、砂糖をはじめとした炭水化物から栄養を得ています。
そこで、砂糖の量を減らしたり、甘いものを食べる時間や回数を減らしたりしましょう。
虫歯・歯周病予防にはプラークコントロールが重要
■矯正治療中の歯周病の予防
プラークの中にいる歯周病菌が、歯肉炎や歯周炎を引き起こすメカニズムはいろいろ考えられています。
例えば、歯周病菌が作り出す内毒素という毒素成分や、歯周病菌自体の成分が直接的に歯ぐきの炎症を引き起こすという説や、それらに対する人間側の免疫反応が歯ぐきを傷めてしまうといった説までいろいろあります。
いずれにしても、歯周病を発症させないためには、歯周病菌を増やさないようにすることが肝要です。
そのために大切なのが、プラークコントロールです。
歯周病は、歯と歯の間の歯ぐきから始まることが多いため、歯と歯を歯間ブラシやデンタルフロスで清掃するようにしましょう。
そして、定期的にスケーリングやルートプレイニングを受けて歯石を取り除きます。
虫歯の予防では、フッ化ナトリウムを使った歯の強化ができますが、歯周病では歯ぐきを強化する方法はありません。
それゆえに、歯周病対策では、プラークコントロールがより一層重要となります。
また、最近では、歯周ポケット内にミノサイクリン塩酸塩製剤(商品名ペリオクリンr)などの抗菌薬軟膏を直接注入する治療も行われています。
これは、歯周ポケット内の歯周病菌に抗菌薬を作用させ、歯周病菌そのものを直接的にコントロールさせ、歯周病を改善しようというものです。
歯周病の悪化は、矯正治療において重要な歯を支える骨に直接的に影響を及ぼすため、適切な予防管理が重要となります。
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矯正治療での抜歯
2021年9月9日
こんにちは
矯正治療では、歯並びをきれいに整えるために抜歯をすることがあるのをご存知ですか?
これは当院でも同じで、残念ながら抜歯しなければ歯をきれいに収められないこともあります。
歯並びをきれいにするために矯正治療を受けているはずなのに、どうして歯を抜く必要があるのでしょうか。
また、抜く歯はどのようにして選んでいるのでしょうか。
今回は、矯正治療での抜歯についてお話ししますね。
■矯正治療での抜歯の目的
矯正治療で抜歯をする目的は、
- 歯の大きさと歯を並べる顎の骨のバランスをとること
歯を並べようとしても、顎のサイズの方が小さいときれいに並べることはできません。抜歯をして歯を減らすことで、歯を並べるスペースを確保しようというわけです。
- 正常な上顎と下顎の歯の噛み合わせを得ること
歯がきれいに並べば、噛み合わせも良くなりますから、こちらもわかっていただきやすいでしょう。
- 理想的な顔かたちを得ること
意外に思われるかもしれませんが、歯並びは顔つきに大きく影響しています。歯並びがきれいに整えられると、顔つきも良い方向に変わっていきます。抜歯を行うことで、歯並びを少しでも理想的な状態に近づけ、顔つきも同時に整えようということです。
です。
■矯正治療で抜歯をすることで得られるメリット
では、抜歯して矯正治療を行うとどのようなメリットが得られるのでしょうか。
○歯のスペースが確保できる
まだ生えてきていない歯が生えてきやすくするほか、歯をきれいに並べるために移動させるスペースの余裕を得ることができます。
この結果、歯並びの形だけでなく、噛み合わせるという機能面においても、矯正治療の成功の可能性が高まります。
○矯正治療後の安定性
ギリギリで歯を並べると、矯正治療が終わったのち、再び歯並びが悪くなってしまうリスクが高まります。
抜歯して、余裕を持って歯並びを整えると、そうしたリスクを下げ、矯正治療後歯並びがより長期にわたって安定できるようになります。
○病的なファクターをなくせる
例えば、一度虫歯や歯周病になった歯は、いったん落ち着いても、再び症状が現れることも珍しくありません。
矯正治療のためとはいえ、虫歯や歯周病になっている歯、もしくはなっていた歯を抜歯すると、矯正治療中、あるいは矯正治療を終えたのちに虫歯や歯周病が再発するリスクをなくすことができます。
病的なファクターとしては、虫歯や歯周病以外に、外傷で歯根がダメージを負った歯や、過剰歯という余分な歯や、親知らずなどの埋もれたままの歯などもあります。
■矯正治療の抜歯に伴うデメリット
矯正治療にはメリットだけでなく、デメリットもあります。
○歯並びの連続性がなくなる
例えば、前歯の隣に大臼歯という大きな親知らずがあると、形の違いがあまりにも大きすぎます。
歯並びは、そんなことなく、前歯から奥歯にかけて、少しずつ変化しながら、スムーズに並んでいます。
歯並びをきれいにするためとはいえ、歯を抜きますと、スムーズな歯の流れが失われてしまいます。
○お口の容積が狭くなる
お口の容積は、歯並びの内側の容積ともいえます。
歯がなくなると、その分お口の中の容積が小さくなってしまいます。
○噛み合わせの安定性が悪化することがある
歯並びの状態によっては、歯を抜きますと噛み合わせの安定が難しくなってしまうこともあります。
○歯の移動距離が長くなる
抜歯したスペースを埋めるために歯を移動させるのですが、抜いたところを埋めるための移動距離はとても長くなります。
歯の移動距離が長くなると、それだけ歯を支える歯周組織や移動した歯の根そのものへの影響も大きくなります。
○前歯の重なりが深くなりやすい
上顎と下顎の前歯は、少し重なり合う程度が理想的です。
もし、上顎の前歯に下顎の前歯が隠れてしまうようでは、重なり合いが深くなりすぎということになります。
抜歯をして歯並びを整えようとするとそのリスクが高くなります。
■適した歯を抜歯しなかったら
実は、歯並びをきれいにするためなら、どの歯を抜いてもいいというわけではありません。
歯並びをきれいにするために犠牲になってもらう歯は、正しく選ぶ必要があります。
もし、適した歯以外の歯を抜歯すると、以下のようなリスクが生じます。
○隙間が残ることによる見た目の悪化
一番わかっていただきやすいリスクがこれですね。
抜歯した歯が大きすぎるなどの理由で、残った歯を動かしてもきちんと隙間を埋められなかった場合、歯並びに隙間が残ってしまいます。
隙間が残った歯並びになってしまい、治療後の見た目があまりきれいにならなくなってしまいます。
○隣の歯の傾斜
抜歯して歯並びを整え、矯正治療を終えたとします。
そのとき先ほどの例にあったように抜歯した後の隙間が残っていると、その隙間に対して、隣の歯が傾きながら寄ってきます。
隣の歯が隙間に向かって傾くと、隙間の隣の歯とその隣の歯との間にも隙間ができてしまいますから、同じように後ろの歯が寄ってきます。
そうです、隙間が残ったままになっていると、隙間の見た目だけでなく、歯並び自体も再び悪くなってしまいます。
○噛み合わせの悪化
隙間があると、その分上顎と下顎の歯が適切に噛み合わせられなくなります。
すなわち、噛み合わせがかえって悪くなってしまうリスクも生まれます。
○前歯の傾き
上顎、下顎の前歯が後ろに向かって引かれることで、内側に向かって傾くことがあります。
○大臼歯の前方への移動
抜歯をしたのちに隙間が残ってしまった状態が続くと、大臼歯という奥歯が前に向かってずれてしまうこともあります。
抜歯する歯は正しく選ぶ必要がある
■抜歯すべき歯の選び方
矯正治療を行うためにどの歯を抜歯するのか、その歯はどのようにして選ぶのでしょうか。
○必要なスペースが得られる大きさの歯であること
矯正治療で抜歯する第一の理由は、歯並びをきれいに整えるためのスペースを得ることです。
もし、抜歯して得られたスペースだけでは歯をきれいに収めきれないようでは、なんのために抜歯したのかわかりません。
しかも、抜歯して得られたスペースの4分の1は、どれほど隣の歯をしっかりと止めていても近づいてきて塞いでしまうと言われていますので、この4分の1を見越しただけのサイズを選ぶ必要があります。
矯正治療で抜く歯を選ぶときには、その歯のサイズが必要なスペースを余裕をもって満たすことができるかどうか、これが1番の条件といえます。
○抜歯後の歯の移動が容易であること
いくら、抜歯した歯の大きさが必要なスペースと照らし合わせて適切だったとしても、抜歯して得られたスペースが歯を移動させにくい場所にあっては矯正治療はスムーズに進みません。
抜歯したのちに進められる矯正治療が、順調に進められるような位置にある歯を選ぶことも大切です。
○隣の歯に悪影響を及ぼさないこと
抜歯する歯の隣に生えている歯は、もちろん残すのが大前提です。
しかし、抜歯する歯を支えている骨の状態、抜歯する歯と隣の歯との位置関係などにより、抜歯した場合に、何らかの悪影響が残そうとしている隣の歯におよびそうな場合は、その歯を抜歯するのは避けなければなりません。
改めて、隣の歯に影響しないような歯を選ぶ必要があります。
○見た目に影響しないこと
仮に、前歯を抜いたとします。
前歯は、外観に大きく影響する歯です。
前歯の大きさがたとえ、必要なスペースとマッチしていたとしても、隣の歯に悪影響を及ぼさない歯であったとしても、前歯がなくなってしまうと、治療後の外観に影響が出るのは避けられません。
理想的な顔つきにすることも矯正治療の目的のひとつですから、見た目に影響するような歯を抜歯してはなりません。
○歯並びの持つ機能に影響しないこと
歯には、見た目だけではなく、食べ物を噛む、言葉をはっきり発音できるようにするなどの機能的な役割があります。
適当に歯を抜いてしまった結果、歯固有の機能が損なわれてしまうようでは、矯正治療の意味がなくなってしまいます。
矯正治療が終わったのち、機能的な面で悪化が生じないような歯を選ばなければなりません。
○左右両方を抜くこと
もし、右側の歯だけ、左側の歯だけ抜くとなると、歯並びのバランスが狂ってしまいます。
その結果、上顎と下顎の歯並びの真ん中が合わなくなってしまうばかりか、歯並び自体が体の中心線からずれてしまうことにもなります。
見た目が悪くなってしまうだけでなく、歯並びの対称性もなくなってしまいます。
抜歯する場合は、右も左も均等になるように抜歯する歯を、かつ原則的には同じ名前の歯を選ばなければなりません。
○予後の悪い歯を優先
例えば、第一小臼歯という前から4番目の歯と第二小臼歯という前から5番目の歯の形はとてもよく似ています。
抜歯する歯をどちらにしようかと迷うことも珍しくありません。
そんなとき、いずれかの歯が、欠けたり割れたりしている、深い虫歯になっている、根の先に膿の袋ができているような場合は、健康な歯の方ではなく、そちらを選ぶようにします。
■第一小臼歯が多い理由
実際の矯正治療の現場では、歯並びの状態や骨格の状態はみなさん異なりますから、一律にどの歯を抜くのが適していると決まっているわけではありません。
先ほどお話ししたように、抜く歯を選ぶにはいろいろな条件を考えて、慎重に選ぶ必要があります。
けれども、一般的に多いのは、第一小臼歯です。
第一小臼歯がよく選ばれるのには理由があります。
○前歯の歯並びを整えるのに有利
第一小臼歯は、前歯部に近い、つまり前歯を移動させやすい位置にあります。
そのため、前歯の乱杭歯や上顎前突、下顎前突などの治療にも十分対応できます。
○奥歯の歯並びを整えるのにも有利
奥歯の歯並びを整えるにも、移動させやすい位置にあるため、奥歯の矯正治療にも利用しやすいです。
○噛み合わせの安定性にも有利
下顎の歯の幅を全て足した数値を上顎のそれで割ったものをオーバーオールレイシオと言います。
第一小臼歯なら4本抜歯しても、オーバーオールレイシオがそれほど変わらないため、奥歯の噛み合わせを安定させやすいです。
○機能上の問題も少ない
第一小臼歯は、元々それほど噛み合わせの力が大きくないので、抜歯しても噛み合わせの力という機能的な点でのマイナスがほとんどありません。
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マウスピース型の矯正歯科装置
2021年9月3日
こんにちは!
最近、マウスピース矯正ってよく耳にして興味がある方って増えていると思います。
今日は当院で扱っている「インビザライン」についてお話していきます。
みなさんは今までの矯正治療のイメージはなにがありますか?
- 金属のワイヤーが目立つ
- 何年も治療期間がかかる
- 毎月調整に通う
- 矯正装置を調整したばかりだと何日かお食事の際に痛くて噛めない
- 歯磨きがしにくいため、虫歯になりやすい
- 食べ物が挟まる
このようなイメージから興味はあるけど諦めた経験がある方もいらっしゃると思います。
■目立たない矯正治療とは
矯正治療というと、金属製の矯正装置を歯の表側につける姿をイメージする方がほとんどではないでしょうか。
中には歯の裏側に装置をつけたり、プラスチックやセラミックの器具にしたりして、目立ちにくくしているタイプもあります。
インビザラインは、それらとは一線を画す透明なマウスピース型矯正歯科装置を使った矯正治療法です。
多くの方がマウスピースと聞くと、スポーツのときや顎関節症の治療で使用するような分厚いマウスピースを想像するかと思います。
インビザラインのマウスピースは、透明ですから装着していても目立ちません。
厚みもとても薄いため装着中の違和感も少なくなっています。
そのため、接客業の方もお仕事中にできるとあって、とても注目されています。
■来院回数も少ない
マウスピース矯正は、インビザラインだけではありません。
インビザライン以外のマウスピース矯正の場合、来院のペースは、およそ2〜3週おきです。
それは、治療を進めるための新しいマウスピースを製作する必要があるからです。
ところが、インビザラインでは、基本的に最初に1度歯型を取ると、3次元画像化技術とCAD/CAM技術により、将来必要となるマウスピースまでまとめて作成できるようになっています。
そのため来院の頻度は6~8週間に1回のペースと、来院の回数を少なく抑えることができます。
■痛みが少ない
インビザラインの特徴のひとつに、ワイヤー矯正と比べて治療中の痛みの少なさがあります。
では、インビザラインはどうして痛みが少ないのか、お話していきますね!
矯正治療中に痛みを感じる理由は、ふたつです。
ひとつは、頬や唇などに矯正装置が当たって傷をつけること、ふたつは、歯を動かすことです。
ワイヤー矯正の矯正装置は凸凹としていますから、角のある硬い部分が頬や唇に当たると、口内炎ができてしまいます。
インビザラインなら、滑らかなプラスチック製のマウスピースなので、頬や唇に傷を作ることがありませんから、傷による痛みが生まれないわけです。
では、ふたつ目の歯を動かすときの痛みとはいったいどういうことでしょうか。
矯正治療で、歯を動かすために歯に力を加えると、歯の周囲を覆っている骨に、吸収と新生が生じます。
歯を動かす方向、つまり圧力の加わる側の骨には、破骨細胞という骨を吸収させる細胞が生まれ、骨を溶かしていきます。
そして、反対側では、骨芽細胞の働きで新しい骨が作られ、歯が移動してできた隙間を埋めています。
この破骨細胞による骨の吸収と、骨芽細胞による骨の新生は、骨のリモデリングという全く正常な現象なのですが、矯正治療では歯を人為的に動かすことで、骨吸収が起こる側に痛みの元となる物質が生まれます。
これが歯を移動させるときに痛みが生じる原因です。
ここまで読むと、ふと疑問が浮かんできませんか?
インビザラインも、ワイヤー矯正と同じく矯正治療ですから歯を移動させます。
歯を移動させなければ、歯並びは整えられませんよね。
では、どうしてインビザラインはワイヤー矯正より痛みが少ないのでしょうか。
それは、インビザラインの歯を動かす仕組みに理由があります。
ワイヤー矯正では、ブラケット、つまり一箇所に力が加わり歯を移動させようとします。
一方、インビザラインは、歯の頭部分、つまり歯冠全体をマウスピースで覆って、歯
全体に力を加えて、歯を移動させます。
歯を移動させる力の強さは、ワイヤー矯正もインビザラインも同じくらいの強さなのですが、インビザラインは歯全体に力が加わりますから、力が分散されるというわけです。
インビザラインもワイヤー矯正も歯を移動させますが、歯に加わる力のかけ方が少し異なるために、インビザラインは歯を動かすときの痛みが少なくなると考えられています。
■歯周病、虫歯のリスク
ワイヤー矯正は、ご自身では取り外しができませんから、食事の後の歯磨きがとてもしにくくなります。
そのため、ワイヤー矯正での治療中は虫歯や歯周病の発生のリスクが、治療を受けていない場合と比べてとても高まります。
矯正治療を受けている間に虫歯や歯周病になってしまうと、治療を中断して、虫歯や歯周病の治療をしなくてはならなくなります。
インビザライン矯正は、ご自身で矯正装置であるマウスピースの取り外しができますから、食後の歯磨きがとてもしやすいというメリットがあります。
もちろん、お食事の時もマウスピースを外していただけますから、お食事の最中に食べ物が矯正装置に挟まって気持ちが悪くなることもありません。
取り外して歯磨きができる点は、インビザラインなどのマウスピース矯正の利点なのですが、マウスピースをつけている間は、歯や歯ぐきの周囲への唾液の流れが悪くなってしまいます。
唾液には、お口の中の虫歯菌や歯周病菌の活動を抑える抗菌作用や、お口の中の汚れを洗い流す洗浄作用、虫歯菌によって溶かされた歯を治す再石灰化作用、お口の乾燥を防ぐ湿潤化作用などいろいろな働きがあります。
インビザラインのマウスピースの装着時間は、1日22時間です。
食事と歯磨きのとき以外は、ほとんどマウスピースを付けているといってもいいでしょう。
この間、唾液のさまざまな働きは、歯に作用されにくくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
外出先での食事など、お食事の後歯磨きができないというときも、少なくともうがいだけはしてください。
また、マウスピースをつけていると、お口の中が乾燥しやすくなりますから、こまめな水分補給でお口の中を潤いしてください。
お水ならマウスピースをつけたまま飲んで頂いても問題ないです。
このようにインビザライン矯正は他の矯正治療に比べて虫歯のリスクが少ない矯正方法ですが、リスクが全くないわけではありませんからご注意ください。
■認定医院
当院は、インビザラインを開発したアライン社から、治療レベルで上位クラスにあたる「プラチナエリート」という認定を受けた歯科医院です。
インビザラインは、治療レベルに応じて7つのランクが設定されています。
当院が認定を受けている「プラチナエリート」は、インビザラインによるマウスピース矯正を、年間81症例以上行った医院を対象としています。
このほかに、アライン社では、歯科医院単位ではなく、診療にあたる歯科医師単位でも認定制度を設けています。
それは、「インビザドクター」という認定医制度です。
インビザドクターは、インビザラインでの治療経験が50症例以上を認定の基準とした制度です。
大きな歯科医院では、歯科医院自体がインビザラインから認定を受けていても、そこで治療にあたる歯科医師がすべてインビザラインに精通しているとは限りません。
そこで、歯科医院の認定と別に、歯科医師の認定医制度を設けているわけです。
当院の担当医は、インビザドクター、つまりインビザライン「認定医」を取得しております。
安心してご相談ください。
みなさんメリットがあるとデメリットも気になりますよね?
良い面ばかりに気を取られて治療を始めるとデメリットに気づいてきちんと治療が進まないことになると残念ですよね。
治療を始める前に必ず知っておきましょう。
当院は上位クラスの治療レベル「プラチナエリート」認定医院
■自己管理が必要
マウスピース矯正とワイヤー矯正の違いはいろいろありますが、ワイヤー矯正以上に重要となるのが、自己管理です。
インビザラインでのマウスピース矯正では、その他のマウスピース矯正と異なり、すぐに使っていただくマウスピースだけでなく、そのマウスピースの次の段階で使う交換用のマウスピースも一緒にお渡しすることができます。
交換用のマウスピースもまとめてお渡しできることが、インビザライン矯正の特徴であり、通院回数を減らせるというメリットにつながっています。
これを言い換えると、患者さまご自身が、歯科医師から支持されたタイミングで、次の新しいマウスピースに取り替えなければならないということを意味しています。
もちろん、交換するマウスピースを間違えてはいけないことは言うまでもありません。
先ほどお話しした自己管理とはこのことで、自己管理こそが、マウスピース矯正を成功させるカギと言っても過言ではありません。
少し面倒臭いと思うこともあると思います。
しかし!理想の歯並びを得るためにも頑張りましょう!
インビザライン矯正では、マウスピースをご自身の手で取り外せますから、矯正装置の隙間に食べ物が挟まったままになる心配はありませんが、矯正治療中の虫歯や歯周病は、矯正治療を中断させる原因となります。
お食事を楽しんだ後は、ブラッシングやデンタルフロスでのお口のケアをしてからマウスピースをつけるのが理想的ですが、それができないときは、うがいだけでもしてください。
そして、うがいの後で、マウスピースをつけるようにお願いします。
■マウスピース以外の矯正装置が必要なこともある
インビザライン矯正では、マウスピースだけでは歯並びをきれいな状態に整えられないという場合、「アタッチメント」という小さな矯正装置を歯の表面につけることがあります。
マウスピースは、このアタッチメントの上から装着します。
すると、マウスピースからの力がアタッチメントに作用して歯に伝わり、歯が移動するという仕組みです。
マウスピース矯正といいますが、完全にマウスピースのみで治療できて、歯には何も着けないとお思いの方も多いと思いますので、注意が必要です。
また、「チューイー」という丸いチューブをつけることもあります。
これは、マウスピースと歯をしっかりとフィットさせるために用いられます。
新しいマウスピースをはめると、マウスピースの歯並びと実際の歯並びにギャップがあることがあります。
もし、マウスピースが歯から浮き上がったまま装置を使用すると、歯に適正な力がかからず、当初の治療計画通りに歯は動きません。
そこでチューイーを装着して、歯にマウスピースをフィットさせて、歯にしっかりと力を加えるというわけです。
いかがでしょうか?
少しはマウスピース矯正についての不安が取り除けたでしょうか?
しかし、マウスピース矯正はすべての方が適用なわけではありません。
抜歯を必要とするような歯を動かす距離が大きい場合など、マウスピース矯正だけでは限界があるという場合がないわけではありません。
そのようなときは一定期間、ワイヤーとブラケットによる矯正を併用することもあります。
目立ちにくい、痛みが少なくできると思い、マウスピース矯正したいけど、目立つのは困るなと思う方。安心して下さい!
あなたにとって最適な矯正治療法をご提案させてください。
もっと詳しく知りたい。インビザラインで矯正治療を始めてみたいという方はぜひ、一度ご相談ください。
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